カテゴリ: スバル

沈黙のセルフダイアグノスティック(スバル サンバー GD-TV1 エンスト修理)

時々走行中にエンジンが吹け上がらなくなり、そのままストール。しばらくの間エンジン再始動できなくなるというスバルサンバーです。再始動できないとき、スターターモーターは勢いよく回るとのことです。そして、気温・湿度とも非常に高くなった今日は再始動がとりわけ困難になり、レッカー搬送されてきました。

平成11年式 GD-TV1 EN07 5MT 走行距離 176,000km


エンジン温度上昇と不調に密接な関係があって、エンジン温度が低下すると調子が回復するという可逆的症状は、イグニッションコイルや、電磁式ピックアップ式回転センサーなど、髪の毛よりも細い電線を多数回巻き込んだコイルに特有のものだと思います。

コイルに使用される電線は、細いながら樹脂の絶縁膜で覆われています。それが過熱や経年劣化などで一般的に「レアショート」といわれる部分短絡が起こり、コイルの電磁特性が変化して性能が出なくなります。

こちらのサンバーは4気筒で2つのイグニッションコイルが装着されています。同時にその2つが不調になることは確率的に低いので、次に疑わしきカムポジションセンサーを調べることにしました。

ステアリングポスト左下に配置される1極の黒と白のコネクターを接続すると、外部診断機無しで自己診断ができます。インパネのエンジンチェックランプの点滅パターンを読み取るものですが、予想通り(?)正常パターンを出力しました。不調がカムポジションセンサーであったとしても、自己診断可能な完全断線状態に至らない今回のようなケースは非常に多く、自動車に用意された「自己診断機能」というのはそれほど万能ではありません。

まずは症状を再現するため加速試験をします。停車ニュートラルでエンジン回転を5,000rpm程度に10分間ほど保持します。
すると、エンジンが吹け上がらなくなりストールしました。再始動を試みますが全くエンジンに火が入る気配がありません。

そして、目星をつけていたカムポジションセンサーをパーツクリーナで急冷。再度イグニッションキーを捻ると難なく始動しました。

今回は、運良く極短時間で原因究明できました。同様の症例では、可能性の高い部位から次々部品交換する手法が採られがちです。それは、自動車修理にかかわる費用が「レバーレート(労働者時間単価)」と「部品交換標準工数(作業時間)」の積のみで、最も高い能力が要求される原因探求の対価を得ようとしていない結果でしょう。

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ITS