スズキのマイルドハイブリッドシステムは、主にISG(Integrated Starter Generater, モータ機能付き発電機)とリチウムイオンバッテリで構成されています。
一番の特徴は、既存のエンジンに比較的小規模な電動パーツを追加することで、コストを抑えながらも効率良く環境性能を高められる点にあります。特に市街地走行での頻繁な発進・停止の場面で、エンジン単体よりも燃費を向上させる効果があります。また、搭載されるリチウムイオンバッテリーは、車両のシート下のデッドスペースに配置されているため、室内空間や荷室容量を犠牲にすることなく、ハイブリッドシステムの恩恵を得ることができます。
ISGは大きさ以外は外観的にオルタネータと変わらず、また同じような位置に搭載されていますが、単なる補助装置ではなく、法的に動力源として認められた重要なコンポーネントです。そのため、車検証の「原動機の型式」欄には、従来のエンジン型式に加えて、ISGの電動機型式も併記されます。
この原動機型式の記載は形式的なものではなく、車両の法的な分類やそれに伴う税制面での優遇措置に関わる重要な要素です。エコカー減税や自動車税の軽減などの恩恵を受けるための根拠となり、公的にハイブリッド車として認定されるための条件となっています。
このISGは、通常走行時には発電機として働きます。減速時には回生ブレーキによりエネルギを回収し、リチウムイオンバッテリに蓄えます。この蓄えられたエネルギは、加速時にISGを動力源として機能させ、エンジン動力をアシストすることで、燃費向上と排出ガス削減に貢献しています。
また、アイドリングストップ後のエンジン再始動時は、今回交換するドライブベルトを介してクランクシャフトを回すため、一般的な軽自動車のアイドリングストップ車にありがちなアイドリングストップ&再スタート時のギクシャクした動作がなく、再始動までの時間を短縮し、よりスムーズな発進が可能になっています。これにより、ドライバーのストレスを軽減し、使い勝手が向上しました。
この様にISGは様々な機能を担い、その駆動ベルトは、従来のエンジンの動力をオルタネータ駆動に分配するだけのベルトより多くの仕事をするのでしょう。この走行距離で、近年の向上したベルト材質の6リブもある幅広ベルトの劣化がここまで進むのは少々イメージと異なりました。
平成31年式 DAA-MK53S R06A-WA05A CVT 走行距離72,000km
ISGベルトのテンショナは油圧式1つのものと、今回のスプリング式テンショナが2つ備わるものの2方式があります。
前者の油圧式ダンパテンショナが備わる形式のベルト交換には大げさなSST(特殊工具)が指定されていますが、
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構造を理解して慎重に行えば汎用工具で可能であることが分かっています。
今回の後者の方式についてもKTCから特別な工具が出ていますが、工夫すれば作業品質や作業の安全性に影響なく、特に必要はありませんでした。
一方で、ISGベルトの外側に掛かる補機ベルト(エアコンコンプレッサ、ウォータポンプ駆動用)ストレッチトベルトの脱着にはSSTが理想で必須と考えます。
このような特殊形状の純正SSTで非調整のベルトを取り外します。
装着時はこちらのSSTを2種使用(ベルトメーカのBANDOの浮き文字が見えます)が指定されていますが、タイトなスペースで、指定通りの作業が困難な場合が多いので、大きいほうのSSTだけで作業します(この狭いスペースでサービスマニュアル通り2種のSSTを宛がうことは本当にできるの??)。
熟練してきますと、同作業は標準時間の半分程度で終了です。
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