こんな風にナットの角が無くなるほど腐食が進行したナットの取り外しは、普通に手工具を使う方法では文字通り歯が立ちません。
通常、アセチレンと酸素の混合ガスで生成する強力な「火」を使います。
快音を放つ青白いバーナーを対象に赤熱するまで当て、
まだ赤さが残るうちに、内部に螺旋が刻まれたターボソケットを食らいつかせます。
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もちろん保護具を使っていますが、眩しい光をじっと見つめた後は、しばらく視界に暗転する像が残ります。
それで思い出したのですが、あなたは「閃輝暗点(せんきあんてん)」という人体に起きる症状をご存じでしょうか。
実は昨年、僕はそれを何度も経験しました(記録をみたら14回も)。
症状は最初、視界の中央、すなわち凝視のエリアにキラキラした丸い小さな光が見えます。
目を擦ってみても、瞑っても、片目ずつ閉じても消えません。なんだろ、無意識に眩しいものでも見たのかな、なんて考えてるうち、キラキラはだんだん三日月形にギラギラ大きくなり、やがて視界の1/3程を覆うようになります。
最初は結構驚きました。
視界をギラギラ遮られる状況が続き、最悪この煩わしいまま一生を過ごすことになるのかなと不安に思いましたが、20~30分ほどすると視界の外に薄くなって消えていきました。
急いで調べると、それは「閃輝暗点」らしいということがわかり、目というより脳の異常とのこと。特に僕のように閃輝暗点が落ち着いてから頭痛を伴わないタイプ(ひどい頭痛と嘔吐を併発するものがあるんだそうです)は、稀に重大な病変が潜んでいることがあるとか。
Web記事にビビらされて、早速近くの脳神経外科のMRIに入りました。
診察室に入ると、医師は、パソコンのモニターに撮影したばかりの僕の頭蓋骨のモノクロ断層像や、違うウインドウの血管など特定の部位を立体視したような画像を、マウス操作しながら、断面をスイープしたり、立体像をクルクルと回したりしていました。
医師:「うーん、たけしさんは、特に病的なものはないですね。あえて言うなら血管が全体的に薄いですかね。この辺の(後頭部あたりでカーソルを回しながら)視覚を司る部分の血流不良が原因と考えていいんじゃないですかね。」
たけし:「脳に血があまり回ってないんですか(笑)。けど、とりあえず安心しました。改善するにはどうすればいいですか?」
医師:「水分補給だね。1日2リットル。頑張って。」
しかし、寒い1月に2リットル/日の水分補給は実質ムリでした。せめて血液をサラサラにとDHA、EPAサプリと青魚をできるだけ多く摂取。それでも多いときは1日に2回閃輝暗点が襲うこともありました。
毎回微妙に暗転パターンが違うものの、20~30分ほど辛抱すれば治まることがわかってたので、最初ほどは狼狽えずにいたのですが、2024年5月9日20時50分から始まった閃輝暗点はちょっと違いました。
ギラギラ三日月の尖った先を結ぶ縦線を境界に、左右の視界が縦方向に大きく「ズレ」たのです。
このときは主のギラギラ三日月が視界に遠のいた後も視界中央で上下にズレた視界は変わらず、閃輝暗点開始から50分ほどしてようやく通常の見え方に落ち着きました。
焦りはしましたが、この様子をしばらく観察していて感じたことは、視野に映るものというは、いかにも「現実」のように見えているけれど、人間が生きていく上で都合よく脳が作り出した「虚像」ではないかということでした。少しの血流不良で、その見え方が機械的と言いますか、あまりにもデジタル的(ギラギラや縦ズレ)に変わるからでした。
ですから本当の現実は、もっと深遠なものではないかなと想像してしまいます。感覚的には遠近とも限られたものしか見えていませんし、色彩においても人間が感じる限定的な帯域だけ。実際はもっと複雑で広大(無限)ではないかと。地球が丸いのだって疑わしく思えるくらいでした。
そういえばコロナ罹患で一時的に失った嗅覚もよく似た側面がありました。失くして初めて、匂いと実感する以外(以上)のもの、例えば、遠近感や、特に印象的だったのは男女の別を検知していることを知りました。
視覚についても、見えてる以上のものがきっとある。
そんな風に強く感じてからは、気づくと半年以上、閃輝暗点を発症していません。
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