豪雨の梅雨明け直後から連続する猛暑。
エアコンの冷えが悪い気がするので一度診てほしいとお預かりしたダイハツタントは、明らかにぬるい風が空調吹き出し口から出ていました。
平成23年式 DBA-L375S KF-VE CVT 走行距離 52,000km
軽自動車で、かつ室内空間の広いタントです。軽自動車の冷房能力ではこんなものでしょうか、と半ばあきらめ気味のお客様。
いくら室内が広いからと、吹き出し口付近までぬるくなってしまうのは異常です。
中古車でご購入され、以前の整備履歴がわかりません。ゲージマニホールドの針が指す値は冷媒過充填のようでした。エンジンルーム内の低圧配管は結露するほど冷たくなるはずがぬるいかむしろ熱く感じるくらいでした。
エアコンサイクルに充填する冷媒量は適量があります。冷媒の量が多いと冷房がよく効くとの誤解はまだまだあるようで、冷えないからと過剰に充填している可能性があります。
以前は、リキッドタンク付近に設けられたサイトグラスで液化した冷媒の泡立ち状態を目視していたものですが、近年はサイトグラスが廃止されて目視点検できないものが増えました。
過充填の懸念を払拭するため、現在充填されている冷媒をすべて抜き取り、配管内を真空引きして規定量の300gを再充填しました。
そして、冷房の効き具合は入庫時とは違ってとてもよく冷えるようになり、冷房をよく効かすためには内気循環で使用していただくのがよいかもしれませんと申し添えました。
後日、やはり昼間の暑い時間になると、乗り始めは良くてもだんだん冷えなくなるということで、再入庫。
エアコンではなく、エンジン冷却系統のオーバーヒートがエアコン装置に悪影響している可能性を探りました。
調べるとウォーターポンプに3度の品番変更がありました。サーモスタットも開き始めが鈍く、新品と明らかに差がありましたので、エンジン冷却系統を正常な状態にするためウォーターポンプとサーモスタットを交換し、暑い時間帯でもエアコンがよく冷えることを何度も確認してお渡ししました。この時点では開きが鈍くなったサーモスタットが原因だったのではないかと推察していましたが、ラジエーターファンでエンジンルーム内部に送られる熱風がすごく熱いことと、開き始めは鈍いものの、100℃付近になると開き量に問題ないサーモスタットに何となくすっきりしない気持ちでした。
「外気導入にすると極端に冷えが悪くなるんです。これはクルマの仕様なのでしょうか?」
と、お渡し後、ほどなくしてお客様から連絡が入りました。僕は無意識に冷房効率を上げるため、お預かり時はいつも内気循環でテストしていましたが、お客様は「空調の蒸れ」を防止するため定常的に外気導入をお使いでした。
確かに外気導入は内気循環に比較して冷房の効きは悪くなります。しかし、極端にぬるい風が出てくる車は経験がありません。
「スッキリ解決に至らずご不便お掛けして申し訳ありません。一般的に自動車は外気導入が通常で、冷房効率を上げる場合に内気循環にしますが、外気導入にした途端、極端に冷房が効かなくなる例は経験がありません。最近は昼間の気温が異常に高いこともありますが、タントの外気導入口から入る空気の温度が想定より高いことは確からしく思います。冷却系統の部品を良くしてもエンジンルームの熱気がさほど変化がなかったのがお渡し前に気がかりでした。」
と僕がお伝えしましたところ、しばらくしてお客様から、
「エアコンフィルタを外して手を入れてみると外気と内気で空気温度がかなり違うことがわかりました。吸入口に直接熱い空気が流れているというようなことはなさそうです。しかしパルクヘッドまで続く樹脂パーツの裏面はかなり熱くなっています。熱風で。」
タントはエンジンルームが非常に狭く、ラジエーターファンの熱風が短い距離でカウルパネルを直撃します。直接素手で触れられないくらい熱くなったカウルパネル。
内部につくり込まれたダクトは、導入した外気を暖めていたようです。
僕も確認しました。暑い時間帯にエアコンフィルタ取り付け部に手を入れ、フラップを外気導入に切り替えるや、温風どころか熱風で、長く手を入れられないほど。
内気循環にしてもフラップの周りから僅かに熱風が入り込み、実際の室内温度よりぬるい風がエバポレータへと導かれているのでした。
冷媒量の適正化・エンジン冷却系統のリフレッシュで、多少は改善されたものの外気導入で極端に冷えが悪くなる原因は、エンジンルームの部品配置など設計側に問題がありそうな印象です。
お客様は、タントのボンネット後端を持ち上げ、往年のエンジンルーム過熱対策を施されました(^^)。暑い昼間でも少し快適に過ごせるようになりましたとお知らせいただきました。
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カクシカおじさん says
お久しぶりですが長文で失礼いたします。
こちらの記事ですが興味があり以前から拝読していました。
で、当方のターボ軽のコンテRSも新車からもう丸8年が過ぎ、走行距離も25万km直前になりましたが、我が車もエアコンの効き具合がかなり劣化していまして、昨年の盛夏頃には生ぬるいエアコン風となっていました。
ただ昨年は車検と同時にフロントブレーキを一新したので予算が足らず暑さはがまんして乗り切りましたが、希望あと4~5年ほど乗りたいと思っているので、盛夏時しか完全に直っているのか判断できないこともあり、今年の夏こそは劣化したエアコンを完全に直そうと7月初めに準備していました。
で、その後自分自身の体調不良もあってエアコンの完全修理にはかなり時間を要したもののすでに完全に直したのですが、同じダイハツ車でほぼ同じ部品構成が採られているこちらのタントさんと比較するべく、今日の午前中の外気温がほぼ40℃ほどの中で、ブロアーファンの直上にあるエアコンフィルター挿入口から棒温度計を挿し込んで温度を計測してみました。
コンテターボの場合、完全暖気後でアイドリング状態での最大風量時では、外気導入口の温度はおおよそ53~55℃との結果でした。計測は今日の午前中でしたが、屋根のない青空駐車で直射日光が丸当たりの状態だと外気温40℃弱、発熱の多いターボ車からすると少し高めではあるものの、タント・ムーヴよりはかなりエンジンルームが広いこともあり、さすがに熱風とまではいきませんが温風には間違いないです。
ちなみに我が車に取り付けているピポットのX2Cの水温計に付属している、インテークエアーの吸気温度を見てみますと75~80℃でした。停車中なので冷気が入らず夏場はやはりかなり吸気温度が上がります。
以前代車でムーヴに乗ったことがありましたが、エンジンルーム内が詰まり過ぎていてビックリしたことがありました。現代の軽四は全長が制約されている中で室内空間を広く取り過ぎ(ムーヴだと210cm前後、ちなみにコンテはちょうど200cm)、この210cm長という値はトヨタ プレミオよりもさらに長く、そのあおりでエンジンルーム内が狭すぎ、あれでは冷却効率がかなり悪いのではないかと危惧します。
私がムーヴを選ばなかった理由のひとつが、エンジンルーム内が狭すぎて放熱性と整備性が悪いだろうと感じたことで、現にバッテリーすらカウルを外さないと交換できないです。おそらくタントも同様でしょう。
私は室内空間を広く取り過ぎている現在の軽自動車には疑問を感じている一人で、コンテの200cm長でもすでに十分過ぎるので、その代わりにエンジンが660ccでは厳しいかもしれませんが、その広大な室内空間に見合うエアコンとヒーターを装備して欲しいと思います。
これだけ猛暑と寒冷が続くのだから、スズキみたいに後席の天井付近からエアコンの吹き出し口を設けるとか、エアコン容量やヒーター容量をアップした車内環境重視の軽自動車(普通車も含む)があってもいいのでは、と思います。夏場の停車中のためのスライドカーテンなど我が車にも取り付けたいぐらいです。
そして今回エアコンシステムを修理して感じたことは、室内空間を広く取った反動でコンテはかなりましですが、総じてエンジンルームのスペースが少なく、普通車よりも広いぐらいの車内空間に見合うエアコン容量が無いのが災いして、今年の夏のように猛暑となるともう容量自体が足らないようです。あの広い車内空間に対し軽四のコンプレッサーとコンデンサーの容量は小さすぎると思います。でも現在のスペース配分では、特にコンデンサーはこれ以上大きなものは取り付けられないのでしょう。
私の車はコンデンサー付近に設置されている純正スポンジ交換まで含めて完全修理して、外気温が40℃超でも走行中なら新車時のようによく冷えるようになりましたが、外気温が40℃を超える中でのアイドリング中だと吹き出し口の温度が10℃を超えてきます。
いろいろと計測しますと、アイドリング状態でも外気温が35℃前後までだと内気循環ですが最大風量近くでも、走行中と変わらない5~7℃前後と良く冷やしてくれますが、外気温40℃を境に冷えがガクンと落ちるようなので、この辺りが設計容量の限界点なのかもしれません。
ただ我がコンテでは今回じかに確認いたしましたが、25万kmという走行距離と冬場の融雪剤等でラジエターフィンもそれなりに劣化しているようで、その分冷却ファンの風が通りにくくなっていることは多少考慮する必要はありそうです。
たけしくん says
カクシカおじさん様
大変ご無沙汰しております。
非常に参考になる情報のご提供ありがとうございます。
今年の類を見ない連続猛暑。高気温も然ることながら高湿度も冷房装置の機能に影響しているものと考えています。
こちらのタントは、対症対策をされて少しは快適な方向に向かっているようですが、街を走る同型のタントにお乗りの方が窓を閉めてお過ごしの様子を見るたび、個体差もあるような気がします。