カテゴリ: メンテナンス一般

オイル下がり? ~車のよろず相談室1~

エンジン不調に関するご相談です。相談室開設早々にご投稿いただき誠にありがとうございます。

『お仕事お疲れ様です。この間、丸山モリブデンを購入したものです。
確かに燃料はすぐに体感できました。おそらくたけしさんの言われる理論だと思われます。

今日は整備内容の相談です。

最近オイル下がりに気付いたのですが、エンジン始動時からしばらく白煙が続きしばらく走ると止まります。たいした量ではないので、オイル消費もさほどではありません。

ただ、この白煙は数年前、もしくはかなり前からあったようで、エンジンが冷えた状態で排気ガスは車検通らずの状態だったはずです。過去10年近く、非常にゆっくりな経年変化の状態のようです。

自分ではバルブステムシールの劣化による白煙だと推測致しました。平成8年式24万キロ走行の車両です。ヘッドオーバーホールを考えましたが、走行距離を考えるとエンジンリビルトに交換の方が良いのかなと。

ジャパンリビルトさんのリビルトエンジンは、バルブステムシール、ピストンリング、親子メタルを新品にされて、ホーニング処理もこなし、メーカーのオーバーホールキットできっちり組まれているようです。

バルブシールの劣化による白煙の場合はヘッドオーバーホールからと考えていましたが、走行距離を考えるとリビルトエンジンに積み換えた方が良いと思われるでしょうか?費用はヘッドオーバーホールの倍を少し超えます。

バルブステムシールの経年劣化は理解できるのですが、ピストンリングなどエンジン腰下の耐久性は全く想像できないので判断できません。プロの方の意見をお聞かせください。』


まず、「オイル下がり」「オイル上がり」という現象について。

クルマに興味をお持ちの読者諸兄に改めてご説明申し上げるまでもないのですが、

「オイル下がり」は、バルブステムシールから吸排気ポート内にエンジンオイルが侵入する不具合。現代では、オーバーヘッドカムシャフト式のエンジンがほとんどですから、バルブステムから「下方」にエンジンオイルが入るイメージです。

↓バルブステムシールの一例

一方、「オイル上がり」は、ピストンリングとシリンダの摺動部摩耗や、オイルリングのオイル掻き落とし性能低下などで燃焼室にエンジンオイルが侵入する不具合。クランクケースから「上方」の燃料室へエンジンオイルが入るイメージです。

どちらの不具合も、エンジンオイル消費や、マフラーからの白煙で発見できるのですが、現象からの推測はあくまでも推測。

大切なのは、エンジンを分解してみないと、本当の原因はわからないということです。

また、質問者様のお車にターボチャージャーが備わる場合、ターボチャージャーの軸からのエンジンオイルリークも白煙の原因になります。

冷機時のしばらくの間だけ白煙が出るとのことですが、バルブステムシールの亀裂や摩耗があり、エンジン停止時にポート内に滴り落ちた一定量のエンジンオイルが燃焼している「オイル下がり」かもしれませんし、シリンダが摩耗していて、熱膨張でピストンとシリンダの隙間が狭くなるまでの間の「オイル上がり」かもしれません。

もちろん、ゴム製のバルブステムシールの劣化の可能性が高いと思います。但し、エンジンオイル交換管理や、エンジンオイルの品質次第で腰下の状態が良くないエンジンも少なくありません。

新車からお乗りでエンジンオイル交換管理が適正であるなら、まずはバルブステムシール交換を実施するといいと思います(ターボ付きの場合はターボチャージャーの良否判断の上)。エンジンオイルが適正に交換されていたエンジンの腰下は例え走行距離が過多であっても痛みが非常に少ないものです。

ご承知の通り、クランクメタルやコンロッドメタルは流体潤滑です。油圧で浮いているので金属同士が直接擦れません。多走行エンジンのシリンダーの摺動部でさえ、エンジンオイルをきちんと交換していれば、クロスハッチが消えるような摩耗痕はありません。オイル上がりになるエンジンは、高回転・高負荷を多用してシリンダーが摩耗しているか、劣化したエンジンオイル(スラッジなど重縮合成分)でピストンリングが固着(スティック)しています。

↓焼き付いたコンロッドメタル。ここまで痛むと酷い打音を伴います。

車齢・走行距離を拝見すると、変速機とその他駆動系、足回り、燃料装置、電装装置などの状態も気になります。一か所に多額の費用を投入するより、不具合確率の高いバルブステムシールの交換を実施し、バルブステムシール劣化の状態を観察、白煙の収まり具合をまずはご覧になられてはいかがでしょうか。

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ITS