3.0リットルのV型エンジンを搭載するアルファGTVは、ノーマルでライドハイト(車高)が低く、前の左右サスペンションロワーアームは、正面から見ると「V字」になっています。
ロワーアームのボディー取り付け部より車輪側が上向きになっていますので、旋回時に荷重が掛かっている外側輪と状態が似ています。
直進状態で、ロワーアームが左右とも、既に旋回時の角度ですから、このままカーブに進入すると、踏ん張りに余裕がないのは明らかですね。
単に車高を下げるだけでは、旋回時の不安定さが増す原因です。多くのローダウンスプリングの固さ(スプリングレート)を極端に硬くしている理由でしょう。
尚、ロールセンターアジャスターというアタッチメントが市販されている車種に限っては、ロワーアームの角度を比較的簡単に補正でき、ローダウンしても、不安定になりにくいように調整できます。
こんな不適切なサスペンションがノーマルで標準とは考えにくくて、以前にノーマルスプリングを交換したことがありましたが、車高変化はなく、外観重視のセッティングだろうという結論になりました。
サスペンション組み直しによる乗り心地改善(アルファロメオ GTV 3.0 V6 GF-916C1)
その後3年経過し、段差通過時に突き上げるような衝撃を感じることが頻繁になってきたとのこと。
ノーマルでバンプストロークが極端に少ない仕様です。コイルスプリングが線間密着して路面からの衝撃がボディーに直接伝わっているのだと思います。リバウンド側に使わないストロークがあるのが非常にもったいないのですが、ノーマルより高車高のスプリングが別注しか選択がないのでは、スプリング設計に掛かる時間や費用を考えると現実的ではありません。
取り急ぎ、経年劣化しているショックアブソーバを交換してみます。量産供給されている唯一の社外品、KONI STR.Tです。
新しいショックアブソーバは、封入されている窒素ガスの反発力で重い車体を支える作用があります。
重いリアゲートに備わるダンバーをイメージするとよいかもしれません。ゲート開閉が多いと内部のガスが抜けて反発力がなくなり、重さを支えられずにゲートが落下してきます。
サスペンションの場合は、概ねコイルスプリングで車体重量を支えていて、ショックアブソーバが担う部分は数値的に少ないように思います。ショックアブソーバは、主機能の『減衰力』が、サスペンション静止時は発生しないので、コイルスプリングと別に考えてしまいがちですが、大切な重量支持の担い手です。
車体が水平で、路面に追従してタイヤが滑らかに上下するサスペンションのイメージを持たれることが多いと思いますが、アクティブサスペンションでもない限り、一般のコイルスプリング+ショックアブソーバの組み合わせでは、いろいろな入力に対しては難しい動作でしょう。
よい足回りのクルマは、高速域で車体揺動が少なく安定しますが、低速域では、路面の凹凸通過時、意外と車体は上下します。重い車体をしっかり支えている証拠だと思います。余分な動作をせず、次の路面状態に備えるので、乗員の不快感が少ないのです。
経年でショックアブソーバ内に封入された窒素ガスが抜けると、減衰特性がそう悪くないのに乗り心地が悪化します。
最初は少しバタバタするような感じ。それがこちらの916スパイダーのようにバンプタッチやスプリングの線間密着を起こすようになると、とても乗っていられなくなります。スポーツカーだから仕方ないとあきらめず、ショックアブソーバをリフレッシュするといいでしょう。
残念ながら、車高の改善はできませんでしたが、乗り心地・静粛性は格段に向上したと思います。
快適なスポーツカーライフをお過ごしください。
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