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アトレー(S220G)アイドリング不調(アイドリング回転高いまま下がらない)

ダイハツアトレー、同業者からの修理依頼です。

「アイドリングが1500rpm付近と高く、エアコンを入れると2500rpm付近になることがある。ISCV(アイドルスピードコントロールバルブ)の不良だろうと見込みでISCV含むスロットルボディーASSYを懇意の修理屋で交換してもらったが症状が全く変わらず、大変困っている。時間も迫っているので一度診て欲しい。」とのことです。

年式不明 S220G EF-DET AT 走行距離138,000km


まずは現車を確認します。こちらのエンジンアイドリング回転は非調整。旧来車のようなアイドル回転調整部はありません。エアコンのON, OFF、オートマチックのレンジ切り替え、ヘッドライトのスイッチのON, OFFなどを操作すると、全体的にエンジン回転は高いものの連動して上昇降下し、回転制御はされている様子です。見込みで交換されたというISCVは最初から不調ではなかったのかもしれません。

まず、電子制御の範囲外、すなわち、単にパイピングが外れていたり、二次エアの吸い込みがないかを入念に点検しますが、異常は見当たりません。

次にスキャナー(G-Scan)を接続します。故障コードはなし。さらにデータモニター。
おかしいデータとして、O2センサーの出力がリーンから動かないことがわかりました。

試しにO2センサーのコネクタを離脱しますが、エンジン警告灯の点灯もなく、データモニターの状態もリーンのまま変化がありません。こんな電子制御システムなの??

O2センサー本体を目視しますと、交換した形跡がありましたので、交換した方もスキャナーでリーンに張り付いたままになっている情報からO2センサーを交換したものと思います。多分、僕も同じことをしていたと思います。

エンジンコンピューターのコネクタに問題がないかを目視で点検、しばらくコネクタを外した状態でリセットのようなことも試みました。

しかし状況は好転しません。のんびり診断している時間がなく、何としてでもアイドリングを下げないといけません。
ふとISCV本体を観察すると、調整できそうな構造になっています。ロータリ式のISCVです。調整できるかもしれないと期待が膨らみます。

ペンタローブの特殊ビットで、おそらく触れてはいけないだろう部位を触ります。これはスロットルボディーASSY組み立て工程の最終調整だと思います。ペンタローブビットはもちろん市販されていますが、通常整備で使用することはありません。だからこその特殊形状です。

研究のためにと用意しておいた特殊工具で緊急回避的に調整に挑戦。思いのほか上手くアイドリングが規定値で安定する場所が見つかり、各電気負荷に応じて適度なエンジン回転上昇も得られました。

しかしO2センサーはリーンのまま…ここまで、診断開始から1時間と少し経過。エンジンECU内部の機能不全も懸念されますが、残念ながら時間切れ。しばらくアイドリングしてみますが、変に自己学習して回転上昇する気配もなく、何だか釈然としませんが、目的は達成できたということでご勘弁いただくことにしました。

依頼者様は、こんなにアイドリングの静かな車だったんですね、と大変喜んでいただけたようでしたので救われました。
その後、万が一不調になればご連絡ください。


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