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ポルシェ 981ボクスター サスペンション修理 ~ミッドシップの特性を考える~

足回り損傷の修理依頼がありましたポルシェ981ボクスターです。

山坂道走行中に車体姿勢の制御が難しくなり道路側溝へ脱輪したとのこと。事故からしばらくして入庫したボクスターは、特に左後輪を強打した様子で、極端にトーアウトしていました。


アルミニウム合金のトーコントロールロッドが大きく曲がっている他は、ホイールに損傷があるだけで、ボディーへのダメージがなく、極めて幸運な脱輪の仕方だったと言えます。他車との接触やお客様にお怪我もない様子でしたのでホッと安心いたしました。

↓大きく曲がったトーコントロールロッド(左)。パーツ側面にはAlSiMgMnと表記があり、特殊な合金なのでしょう。これほどの曲がりでも破断しない粘りのある特性に驚きました。アルミニウム合金を多用するクルマ全体の構成も、使用する場所で様々な特性を持たせ、単純に軽量化ではない開発意図を感じます。

脱輪は某ドライブウェイの上り、深めの右カーブだったということです。季節的に落葉もあったでしょうし、僕が知る限り路側には浮き砂が多い箇所と思います。

981ボクスターは、運転席背もたれのすぐ後方にエンジンが搭載されるリアミッドシップです。エンジンの重心と車体重心が近くなりますのでピッチング、ヨーイングの慣性モーメントを小さくでき、旋回性能に優れているという利点があります。

但しそれは、タイヤのグリップ力が4輪とも保たれているときに限ります。カーブ途中で車体後部が滑り出す、いわゆるドリフトアングルが付き始めると、旋回中心が前方に移動。

リアミッドに搭載された重量物(エンジン)との間隔が広がって慣性モーメントが大きくなり、リアが滑り出したら止まりにくく、スピンモードに陥ります。ドリフトしても意外に安定して走行できるフロントエンジンの自動車と対照的と言えるかもしれません。痛んだリアサスペンションを眺めながらそんな風に考えていました。

「過敏」な特性のリアミッド。積極的に利用すればこれほど運転が楽しいレイアウトはありません。加速時のトラクションはフロントエンジンとは比べ物にならないのですから。

逆方向に変更されがちなサスペンションやタイヤの扁平比など、チューニングできる箇所は可能な限り鈍感にするのがよいでしょう。

最後に、オーナー様がどうも決まらないとおっしゃるドライビングポジションについて。

ポルシェのハンドルは直角に近く立っています。最初に調整されていたより座面を低く、背もたれを立ててハンドルを幾分抱きかかえるようなイメージで着座するのがよい印象です。実際にお座りいただき、微調整いたしました。

その後のご感想をお待ちしております。

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