小さなアルミテープをクルマに貼るだけで、空力特性が改善されて、ハンドリングや乗り心地によい効果が出るというチューニング。ご存じの方も多いでしょう。
話題急騰のきっかけは、天下のトヨタ自動車がメーカーラインオフの一部のクルマに標準装着したと発表したことでした。もちろん特許も申請されています。
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コストにとりわけシビアな同社がアルミテープを標準装備したとなっては、もうオカルトチューンではないと、ご来店のお客様のクルマにもアルミテープ貼付がちらほら。
このチューニング、アルミテープを所定の位置に貼ることで静電気を除去し、ボディー表面の空気の流れを整えるというのが根拠になっているそうです。
『静電気』、誰でも知っているけど、深く知る人は意外なほど少ない自然現象。
静電気が電線など導体を流れる電気と違うのは、主にプラスチックなど絶縁体の物体表面に表れて動かないことです。
ラップフィルムを剥離したり、下敷きで髪の毛を摩擦したり、物体同士の接触や摺動、または衝突で(マイナスの電気を帯びた)電子が物体間移動することで、電気的な不均衡が起こり、静電気が発生すると言われています。
物体によって表れる静電気にはプラスとマイナス、そして強さの差があって、同じもの同士は反発し、異なるもの同士は引き合う性質があります。
金属など導体の接触・摩擦等でも静電気は発生しますが、普通は瞬時に流れてしまいます。ただ、金属が他と絶縁されている場合など、金属に電気的な不均衡が残される場合もあるようです。
そう考えると、エンジンやトランスミッションなどは忙しなく回転・摺動していますし、ショックアブソーバ内部では、複雑な経路でガスやオイルが激しく動きます。そして、走行中のボディー表面は空気との摩擦に晒されるなど、クルマは静電気が非常に発生しやすい環境だといえます。
クルマは通常、地面(アース)からタイヤで絶縁されていますからクルマに静電気が残ったままになり、それがいろいろなところで作用していると考えられます。
クルマ以外では、あの激しい雷も静電気ですし、コピーやプリンターは静電気の性質を積極的に利用した機械です。半導体や液晶パネル製造現場では静電気が歩留まりを左右するワルモノ扱い。そうそう、自動車の新車塗装工程では、塗料の付着向上を狙う電着塗装がありますよね。
だからと言って、ほんの小さなアルミテープで1トン前後の大きなクルマの動きを変えるほどの作用があるかと想像した場合、やはり「プラシーボ効果」程度の作用しか期待できないかなと正直に思うわけです。
そこで、小さなアルミテープでどれほどの除電効果があるのか確かめてみることにしました。用意した材料はすべて大手100円ショップで入手可能です。
まず、2つのPETの容器に発泡スチロールビーズを適量同量入れて激しく振ります。
しばらく振り続けると、ビーズとPETが帯電して容器の内側にべったりと張り付いたままになりました。
2つの容器内の帯電の様子に差がないことを確認して、片方の容器内部に小さなアルミテープを適当に貼付します。
このように、アルミテープを貼っただけでは変化はありません。容器内壁にはビーズがついたままなのがわかると思います。
ここで、先ほどビーズを帯電させたときのように再度激しく振ります。
すると、このようにビーズは除電されて全て容器の底に落ちてしまいました。
容器を逆さにすると、さらによくわかります。
アルミテープの有無で、はっきりとした差がありました。この後、両方の容器を振り続けましたが、各々の状態に変化は見られませんでした。状態がそれぞれで安定したようです。
クルマにアルミテープを貼付した状況とは異なりますが、小さなアルミテープで静電気の状態を変化させることは確実にできるようです。
現在の市販アルミテープは、効果があるとしても体感的には「気のせい」レベルでしょう。しかし、将来技術が進んで、発生する静電気を意図的に制御できるようになれば、誰もが体感できる素晴らしい仕掛けができるかもしれません。
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