現在、多くの入庫車両にスーパーロングライフクーラント(以下、スーパーLLC)が、エンジン冷却水として使われています。
以前のロングライフクーラント(以下LLC)と同様、主成分はエチレングリコールという多価アルコールです(エチレングリコールは水酸基が分子中に2つなので二価アルコール)。
旧来のLLCは、2年毎の交換が必要でしたが、スーパーLLCは、添加剤(防錆剤、消泡剤、その他)の技術開発が進み、初回交換は、7年もしくは16万キロや、11年もしくは20万キロ(いずれも早く到達した方)といった非常に長い交換サイクルとなっています。
エチレングリコールは環境負荷の高い物質で、生体内で代謝されると有毒化します。第一に適正な廃液処理が必要ですが、交換サイクルを長くして環境負荷を低減する努力をメーカーが行った結果と言えるでしょう。
さて、鋳鉄シリンダブロックが主流だった時代のエンジンは、クーラント交換を怠るとクーラントが「赤錆び」色を呈して、一見して管理不行届きがわかりましたが、近年はオールアルミニウム合金のエンジンが主流ですから、クーラント交換を多少怠って内部腐食が進行していたとしても、色相にほとんど変化が見られません。
車齢19年のトヨタ車が入庫しました。
スーパーLLCは、少なくとも8年前に1度交換されている履歴があり、それ以前は不明。
メーカーの交換指定は、初回7年、16万キロ毎(2回目以降は、4年、8万キロ毎)どちらか早い方となっています(2回目以降の交換時期が短くなっているのは、全量交換が難しい水路構造に起因していると考えています)。
TOYOTA(トヨタ) スーパーLLC 2L 08889-01005
左のボトルは新品のスーパーLLC(50%希釈済み)、右のボトルが8年間無交換だったスーパーLLCです。
色や透明度はほとんど変わりません。
この2つの検体を、北海道地区の冬場の氷点下を想定して、冷凍庫に一晩入れてみました。マイナス20℃程度とお考え下さい。
新品のスーパーLLCが完全な液体のままだったのに対して、使用過程の8年無交換のスーパーLLCはシャーベット状に固まりました。厳寒地では水路部品にダメージを与える可能性があります。
防錆、消泡の性能も劣化していると予想できますので、特にスーパーLLCの場合は、外観だけで交換時期を判断するのは誤りだといえるでしょう。
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