クルマの外装のキズは、ほんの少しでも大変気になるものです。
特に金属パネルについてしまったキズは放置すると錆が発生しますから、できるだけ早く処置するのが理想です。
大きな凹みを伴うキズの場合、やはり専門的な鈑金塗装を施すのがよいと思いますが、ボンネットの飛び石キズや、側面の僅かな線キズ程度であれば、それを隠すためにキズのあるパネル全体を塗装するのは、費用的にも仕上がり的にもアンバランスに感じます。
近年の鈑金塗装技術はたいへん高度になってきていますので、少し見ただけではわからないほど綺麗に仕上がりますが、補修はあくまでも補修。オリジナルの塗膜を完全に再現するのは極めて難しいのです。
ほんの少しのキズのために、せっかく統一感のあるオリジナル外装を部分的に補修塗膜で覆う修理は、何だか勿体ない気がします。
そんなこんなで、少しのキズくらいならと、あなたはカー用品店などで販売されているタッチアップペイントでキズ隠しに挑戦された経験はないでしょうか。
けど、カラー番号を合わせているのにどうも色が違っていたり、慣れない筆でペタペタ塗っているうちにかえって目立ってしまい、錆びるよりマシ、と無理矢理自分に言い聞かせて作業を終えてはいませんか?
そこで、まずは筆選びです。
こちらは、上野文盛堂の高級面相筆 ウッディフィット 2/0。
コリンスキーというイタチ科の毛を使ったタイプになります。コリンスキーの最大の特徴は、絶妙な『しなり』です。同社の筆には幾種類かありますが、僕はコリンスキーの使い心地が好みでした。
さらに、文盛堂の面相筆のよいところは、軸(筆菅)に適度な太さがあること。一般的に面相筆はストローのような細すぎる軸が多く、穂先の調整が非常に難しいのです。
一般的なタッチアップペイントの蓋の内部に付属する樹脂の筆と比較すると違いは明確。
付属の筆では細かい表現が難しい最大の理由です。
次に、筆慣れしていない場合に苦労するのが手の『震え』でしょう。
せっかく細かく描ける筆を手に入れても、穂先が安定しないと台無しですね。
慣れないうちはこのように、利きの右手のひら小指側側面を、水平に構えた左腕に当てて安定させるとよいでしょう(左利きの場合は逆)。
穂先を対象に置く際、呼吸を止めるという方法はあまりお薦めしません。心臓の鼓動が手先や穂先に影響して脈打つからです。ゆっくり浅く呼吸するほうがずっと安定します。
筆が良いと一気に上達しますし、筆運びで仕上がりや表情が全く違うことにも気が付きますから、絵を描くようなイメージでタッチアップペイントを楽しんでみてはいかがでしょうか。
表現力に優れた上野文盛堂の筆は、スケールモデルの細部塗装に最適。
下の3車種は、以前に製作した1/24スケールのプラモデルキットです。広い部分はハンドピースで吹きますが、細かい部分はコリンスキーの面相筆で仕上げています。