作業環境と労働安全衛生を考える ~鈑金塗装併設から4か月を経て~

約5キロほど離れた鈑金塗装の事業所が諸事情で閉鎖となり、40年以上の長きに渡り作業に従事してこられた古手の職人と一緒に仕事を開始して4か月が経過しました。

少しずつ作業場の体裁を整え、一番奥の二柱リフト近辺で一連の作業ができるようになりました。

僕が行う自動車整備の作業も種々危険を伴うのですが、鈑金塗装の分野は使用する材料や機器が大きく異なり、現状の把握から問題を抽出し、その対策を考えました。


まず第一に粉塵です。間もなく花粉症の季節で、アレルギー症状が酷くならないためにも早期の対策が必要でした。

「鈑金パテ」と称する、鈑金作業終了後に表面の微妙な凹凸を平滑するための2液硬化型のポリエステルは、カーボンファイバーや熱伝導のためのアルミ顔料が配合され、硬化反応後に行う研削作業でそれらの微粒粉が発生します。

仕上げ塗装は低圧ガン(LPHV)による吹き付けで、ミスト状の飛散物には2液硬化のウレタン樹脂や各種顔料、トルエンやキシレンなど有機溶剤を含有します。

簡易パーティションで区切って排気装置を稼働し、散水しているものの、同一構内で作業しているため、今まで使用してきた国家検定区分1(0.3マイクロメートル粒子捕集率80%)の使い捨て防じんマスクでは不十分で、区分2(0.3マイクロメートル粒子捕集率95%)の着用に切り替えました。(3M 6500QL/2071-RL2)

目視できる比較的大きな粉塵は、鼻や気道で捕捉されて排出されるのですが、マイクロメートル以下の見えない粉塵が問題で、肺胞に達してしまいます。PM2.5(粒子径が概ね2.5マイクロメートル以下のもの)が問題とされている理由の一つです。

肺胞に到達した粉塵も多くは呼気と共に排出されるのですが、一部は残り、粉塵の多い環境で生活し続けると「気づかぬうちに」症状が進行して、現在は治療の決め手に欠ける重大な疾患になるリスクが高まります。

マイクロメートルレベルの粉塵補足に有効な区分2のフィルターは、花粉や黄砂、ウイルス対策としても有効です。一般にドラックストアなどで販売されているサージカルマスクは、装着者からの飛沫感染防止の役割が主で、他からの粉塵・ウイルス侵入に対しては期待ほどの効果がありません。

そして、有機溶剤対策で専用「吸収缶」を併用し、嗅覚的にはいわゆるシンナー臭はなくなります。(3M 6001-OV-01)

MAGによる溶接作業もあります。

アークの熱によって溶かされた金属が蒸気となり,その蒸気が空気中で冷却され固体状(金属酸化物)の細かい粒子(ヒューム)が発生。一見煙のようですが、こちらも高濃度長時間暴露で肺疾患の可能性が高くなります。

さらに、アークからの強烈な紫外線から肌や目を守るためにも一級の保護面を用意しました。自動遮光タイプの溶接面は防じんマスクとの併用が可能です。(Snap-on YA4601)

高速ハンドグラインダーによる研削・切削作業時にも、金属粉が飛散します。防じんマスクに加えて、多方向、特に側面からの飛来物から目を守るため、使い古した保護メガネをシューティンググラスに変更しました。アメリカ工業規格 ANSI Z87+ 適合品。(Smith & Wesson Phantom Clear)

聴覚保護に関しましては、昨年再発した難聴をきっかけに聴覚過敏になり、インパクトレンチの打撃音すら不快に感じるようになりました。これ以上の症状進行を防ぐために適宜イヤーマフを装着しています。

安全対策にかかわる保護具装着は総じて煩わしいものです。危険を認識しつつ対策を怠り、不自由な思いをして情けなく余生を過ごすことと比較すると、対策開始時の多少の不自由は習慣と熟練で解消されるでしょう。そして、保護具の今後の進化にも期待します。

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