パンダリーノという同好会が定期開催されていると、初代パンダのお客様から教えていただきました。
聞くところによると、参加台数300台の大変な人気イベントで、応募開始早々に定数一杯になり、参加資格を得るのも難しいんだそうです。
開催地は静岡県の西寄り浜松市。京都からは250kmほど離れた遠い場所になります。
僕はメカニックの立場から、車齢24年超の経年イタリア車で安全に自走往復するのは難しい、可能なら積車でと、正直な意見をお伝えしましたが、お客様は頑なに自走での参加を望まれました。
至るところに脆弱さがある初代パンダを「普通に」乗るためには、理想的にはプロメカニック並の技量と設備工具、部品調達が必要です。イベント参加者の中には理想に近いオーナーがいらっしゃるようで、そのような方々と格差なく情報交換されるお客様から不意に聞く専門すぎる自動車用語や修繕方法に驚かされることがあります。
昨年はイベント数日前に重要パーツが故障してオーバーヒート。修理が間に合わずお客様にとっては残念でしたが、旅先でのトラブルが運よく回避でき、僕は安堵の胸を撫でおろしました。
【参考記事】イベント参加直前のオーバーヒートと供給終了のラジエーターファンモーターの手配(E-141AKA フィアット パンダ)
無謀と感じる経年車両のイベント自走参加ですが、同種のイベント参加経験のある別のお客様の話では、ナンバーが付いている実動車なら遠方でも自走参加は当たり前。例え途中でトラブルになろうと、それも含めて楽しいイベントなんだそうです。
さて、昨年ラジエーターファンの故障を直してからは、助手席側パワーウインドウが動かなくなった以外は特段不調らしい不調なく、今年のイベント開催日が近づいてきました。
オーナー様のご希望で、せめて遠くへのドライブを快適にと、抜けきっていたショックアブゾーバと、タイヤを新調することになりました。
純正ショックの新品は当然入手不可ですが、愛好家同士の情報交換でオリジナルに近いモノと入手されたのは、窒素ガスが封入されていないシンプルなオイルダンパー、KYB Premiun でした。タイヤとショックが新しくなって姿勢が整い、直線基調のシルエットは洒脱さが増しました。
ところがお渡し直後、インパネにバッテリーのマーク(チャージランプ)がぼんやり点いている、と連絡が入ります。
またしてもイベント直前のトラブルです。チャージランプの点灯は充電装置オルタネーター不調を示唆し、その先には走行不能が待っています。
オルタネーター以外の接触不良も視野に、古参の電装職人を訪ねて単体点検に掛けます。
使い込まれたテストベンチにセットされたオルタネータが、低い唸り音と共に回り始めるや、職人さんはベンチ下方ににぶら下がった手作りのパイロットランプの灯火を見、「あー、アカンね」とオルタネーターの内部不良を即座に診断されました。
このパイロットランプはチャージランプと同じ動作をするそうで、インパネに灯ったのと同様にぼんやりと光っていました。
そのころお客様も懸命で、例の情報交換で得たという内容が携帯端末に届きます。外国語を翻訳してくださいとばかりにコピーペーストされた文は、経験済みの先輩愛好家から送られてきたもののようでした。
オルタネーター内部のブラシやレギュレートレクチファイアの交換で安価に治ればいいですねという主旨。
しかし、目の前の専門家に尋ねると、
『それは趣味の領域。マレリの代替内部部品は入手も交換もできるけれど、部分修理では不安が拭えない。ASSY交換がいい。』
との御託宣。
そうして手配した社外新品は、他車種共用の関係か容量が55A→65Aとなり、意外にも注文翌日に手元に到着しました。
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交換作業は至って容易だったのですが、工具が触れて破損するのを懸念して取り外した水温センサー(高水温ランプセンサー)の平端子を、オルタネーター交換後に戻してエンジン始動すると、今度は高水温警告ランプが点きっぱなしに(汗)
一つ消すと、また別の一つが点灯。
モグラ叩きのような状況につい笑いが出ますが、落ち着いて調べると水温スイッチがONのまま固着の上、平端子の接触不良があったようで、水温ランプは元々機能不全でした(昨年のオーバーヒート時も不点灯)。
そして、ふとタイミングベルトカバーがフラフラになって、タイミングベルトが露出しているのにも気づきます。
前回タイミングベルト交換時に新品にしたばかりなのに、取り付け箇所の樹脂が完全に劣化して粉砕しています。
なんという脆さ! しかし、これがフィアットであり、イタリア車なのです。
カバーは純正も社外も国内に無く、ebayで見つけた社外品をバルト三国のどこだったかから取り寄せ。
なんと、こちらを装着できたのはイベント前日のギリギリでした。
そういうわけで、深夜に出発したパンダは無事会場に到着されて、晴天の下イベント参加は大成功。
復路も問題なかったと、大変お疲れの中お帰り直後にご報告いただきました。
数年越しの計画が成就でき、微力ながらお手伝いできたことを大変光栄に思います。