時速80キロあたりで、運転席足元に不快な振動を感じます。この振動が気になったときは社外ホイールのスタッドレスタイヤだったので、タイヤホイールが原因と思っていましたが、純正ホイールのサマータイヤに交換してからも異常振動に変化がありません。高速道路でよく使う速度域なので運転する気持ちが沈むほどです。以前はこのような振動は感じた記憶がありません。いったい何が悪いのでしょうか?
とご相談がありましたダイハツ ミラです。
平成17年式 TA-L250S EF-SE 5MT 走行距離 64,000km
助手席に同乗いただき症状を一緒に確認します。おっしゃる通り時速70キロ付近から振動の予兆が感じられ、80キロに到達すると運転席足元に大きく不快な周期振動が現れました。
この大きな振動を感じたあとは、時速30~40キロにも小さいながら同様の振動が感じられるようになりました。また、ゼロ発進時にも、ゴロンと、まるで重いものを動かすような不均一な転がり感があります。
タイヤホイールセットを交換しても症状に変化がないとのことでしたが、念のため現在装着のタイヤホイールセットのホイールバランスの確認と、サービスカーに使用している同サイズのタイヤホイールを装着して走行テストをしました。結果、症状にほとんど変化がなく、車両側に原因があることがわかりました。
振動はアクセルON時、高負荷時が特に大きく、アクセルOFFや、ニュートラル(クラッチを切る)では低減されます。
お客様は以前に交換したエンジンマウントがまた劣化してきたのでしょうか?と心配されていましたが、タイヤ回転に同期した周期振動の原因はエンジンを支えるマウントゴムの劣化ではなく、回転部分のいずれかでしょう。
次にドライブシャフトに注目しました。
フロント駆動のダイハツミラは、トランスミッションから左右に長さの違うドライブシャフトが備わります。左右ともシャフト自体に曲がりはありませんでしたが、左内側のジョイントのラジアル方向に僅かにガタが感じられました。こんな小さなガタがあんなに大きな振動を発生するのでしょうか。エンジンルーム左寄りのトランスミッションで、左側のドライブシャフトが短く、ジョイントの動作角度も大きくなりますから、無理が掛かる方ではあります。
さて、部品番号検索は、品番変更の情報があり、重要なヒントを与えてくれます。
ガタが気になった左側ドライブシャフトは、大きく品番変更されていました。そして現行品番で中古部品を検索すると、平成26年式のムーヴコンテのドライブシャフトがヒットしました。
走行距離の少ない中古ドライブシャフトと交換点検を実施します。新しい品番のものはシャフト径が1.5mmほど太く、等速ジョイントも内外とも一回り大きなものでした。この変更がどういう理由かはわかりません。同形式の駆動系が備わる多くの車種と部品を共通する意図があったのかもしれません。
アウタージョイント(左:新品番、右:旧装着品)
インナージョイント(左:新品番、右:旧装着品)
交換後の円滑なゼロ発進で、異常振動が解消されたことを実感します。もちろん高速テストも行い、快適な軽自動車の走りが戻りました。
振動の原因だった左ドライブシャフトの内側ジョイントのケース内壁には、トリポードのベアリングボールが摩耗させた痕跡がありました。これは指の腹で触診してわかる程度のものです。
同時作業でショックアブソーバと関連部品のリフレッシュ。好評のKYB NewSRは快適な走りをさらに安定へと導きます。
↓ガス抜けしたフロントショックロッドは押し込むと戻ってきませんでした。
↓リア側のショックアブソーバはシェルケースが一回り大きく、安定の減衰特性を提供します。
オーナー様には問診から診断のプロセスなど、いろいろな場面でご理解をいただきました。心より感謝申し上げます。多くの部品を見込み交換することなく、ピンポイントで原因究明できたことをうれしく思います。走行距離・年式ともまだまだ活躍できるお車です。今後とも末永くお付き合いよろしくお願いします。