一般的にエンジンマウント(エンジンマウンティングインシュレータ)が劣化すると、アイドリング時に不快な振動が出たり、ゼロ発進時に「ゴトッ」と大きな音がして、そのまま放置してられなくなるものです。
そんな不快感を感じないまま、一度もエンジンマウントを交換しなかったトヨタの初代ヴィッツは、走行距離が32万キロに迫りました。
平成15年式 UA-SCP10 1SZ-FE 5MT 走行距離 318,000km
エンジンとトランスミッションが合わさった大きく重い物体は、エンジンルーム内3箇所のエンジンマウントで支えられます。
右側と左側のマウントは上方に位置し、重い物体を吊り下げるイメージです。
一方、リアのマウントは他の2つのマウントよりずっと下方に備わり、サスペンションのクロスメンバー上に配置されます。リアマウントの主な役割は、重量の支えより、エンジン&ミッションの回転運動抑止です。
昨年のエンジン換装時、中古エンジンに右側マウントが付属していましたので、右側はそれを使いましたが、左側とリアマウントは目立つ劣化がなかったのと、体感不調がなかったので、そのまま使い続ける選択をしました。
そしてエンジン換装してから約2万キロを走行した頃、ゼロ発進時に微かな「コッ」という異音が左前方からすることがあるとの訴えで、サスペンション、排気管のジョイント部などを点検しましたが異常なし。
まさかと思いましたが、左側マウントを取り外してみたところ、マウンティングラバーが完全に千切れてブラブラの状態になっていました。
先述通り、ここまで劣化が進む前に体感不調があるものですが、こちらの車種に限っては微かな異音のみでした。さすがトヨタ(?)
リアマウントも確認します。
マウント中心が下がっていますが、大きな亀裂は無く、細かいひび割れ程度でした。
2本の長いスタッドは、製造組み立てを容易にするための都合でしょう。製造時のことを優先すると、例えば今回のようにエンジンマウントだけを交換するアフターサービス時への配慮が欠けていることがよくあるのですが(特に輸入各車)、スタッドが長くて一見難しそうな脱着も、手順さえ誤らなければ非常に簡単に脱着できるあたり、設計者のささやかな気遣いだろうなと思うのです。
左側マウントが完全に千切れていましたから、新品に交換後は重いエンジン&ミッションの余分な揺動が無くなり、シフトチェンジやクラッチワークが格段にスムーズになりました。
マニュアルミッション特有のことですが、運転者がエンジンマウントの不調に合わせてアクセルやクラッチを操作しますので、オーナー様は違和感程度にしかお感じではなかったようです。
クラッチ操作が下手に感じるようになってきたなら、もしかするとエンジンマウントの劣化が原因かもしれません。
TOYOTA(トヨタ) 純正部品 Vitz ヴィッツ 【NCP131 KSP130 NSP130/135】 リアチャーム 【オニキス】 08231-52390