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アクスルシャフトベアリングの交換(スズキ エブリィ LE-DA62V)

法定12ヶ月点検でお預かりしましたスズキ エブリィです。

平成15年式 LE-DA62V K6A 3AT 走行距離 108,000km

自家用乗用車等の定期点検基準(別表第六)に基づくと、12ヶ月点検では、ホイールベアリングの「ガタ」点検は実施しなくてもよいことになっています。


しかし、ホイール内側に配置されているブレーキ装置の点検は項目にあるのですから、たった数秒で済むベアリングの「ガタ」点検は実施するべきでしょう。

そのホイールベアリングのガタ点検で見つかったリアアクスルシャフト(動力軸)のベアリングの不具合です。ベアリンググリースが、ドラムブレーキ内部で飛散していました。

リアブレーキのバックプレートと共にリアアクスルシャフトを車両から離脱します。ホイールシリンダを取り外す必要がある構造で、ブレーキフルードを抜き取り、油圧ラインを一旦切り離します。

アクスルシャフトに圧入されているベアリングとリテーナ。

リテーナは、ベアリング保定とオイルシールの当たりを担う部品で、その内径はベアリングインナーレース内径よりやや小さく、非常に強力に圧入されています。

リテーナの取り外しは困難で、修理書には、ディスクグラインダー等で一部を薄く削り、タガネで割り取る指示がされています。

しかし、高速回転のディスクグラインダーの操作は大変危険です。予期せぬ歯の暴れは部品の損傷だけでは済まないことがありますので、とても神経を使う作業といえます。

今回は、比較的低速で回転するエアベルトサンダーを使用しました。切削力の優れた3Mのセラミックベルトを装着すると安全迅速に作業が進みます。アクスルシャフトにギリギリ接近するまで削り込み、軽くタガネを当てるとリテーナにクラックが入ります。すると、アクスルシャフトに全く傷を付けることなくリテーナの密着を解くことができます。

そして、新しいベアリングとリテーナを圧入しました。

リテーナは車種によって熱膨張させてから圧入する指示があります。スズキの修理書には単に圧入と書かれていましたが、鍋で熱したエンジンオイルなどで膨張させると円滑な圧入が可能です。このように人間のセンサーをフル稼働させる熟練の必要な作業も、ベアリングの品質向上で随分機会が少なくなりました。

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