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群羊を駆りて猛虎を攻む(スズキ エスクード CBA-TD54W サーモスタット交換)


「高速道を走行中に今まで見たことのない水温の数値を示した。考えられる原因と、それが大きな故障につながるなら事前に対処したい。」とのお知らせと、冒頭の写真が送られてきました。

平成19年式 スズキ エスクード CBA-TD54W 5MT 走行距離 128,000km

水温表示が曖昧かつ簡素化される最近の自動車です。非常に重要なインフォメーションを知らずに走行することの不安を払拭するために、オーナー様はエンジンコントロールユニットからの水温信号を表示させる機器を備え付けていらっしゃいます。送られてきた写真の水温は95℃を示していますが、この後ピークは98℃になったそうです。

今まで、幾例かサーモスタットの開弁不良でオーバーヒートの事例を経験しています。偶然スズキの軽自動車の事例ですから、交換を前提にサーモスタットの点検を実施することにしました。

年間走行距離が約4万キロと、多走行のお車ですからクーラントの交換は1年に一度行うのが理想だと思います。クーラントの主成分エチレングリコールは化学的に安定ですが、重要な添加剤である防錆剤の機能低下が多走行(エンジン稼働時間過多)の車には見られるからです。お客様に、新しいクーラントと抜き取ったクーラントの着色や濁りの差をご覧いただきました。

さて、水路途中に設けられ、ラジエータへ循環する水量を調整するサーモスタット。新旧2つのサーモスタットを行平鍋で煮込んで弁が開く様子を観察します。

開弁温度仕様は82℃。開き始めには差がありませんでしたが、水温が上昇するに従い、明らかに新品のサーモスタットが早く弁が開き、完全に開ききるまでの速さに差がありました。

新品に交換後、水温は安定しているとのお知らせを年始早々に頂戴し、大変安心しました(吸気温度がマイナスになっていますね!)。

お客様の細かな気配りで大きな故障の前に対処できました。サーモスタットやクーラント交換など、一つ一つは目立たず、効果がすぐに実感できる整備ではありません。しかし、このような小さな積み重ねが自動車を長期に安定的に稼動させる大きな原動力につながると思います。

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