2025年の年明け早々、同業者様から連絡(相談)が入りました。
車齢10年、走行距離7万キロ未満の車両を販売、トヨタはとにかく壊れないイメージだから安心していたところ、納車半年でエンジン警告灯点灯と共に、エンジンの体感不調(特にアイドリング時の振れ)が現れたとのこと。
特定のシリンダが機能していないような症状は断続的で再現性に乏しいらしいのですが、エラーコード P0304、すなわちNo.4シリンダ失火検出していることが確認できているとのこと。
見込みで社外イグニッションコイルと、社外スパークプラグ、リビルトエアフロセンサ(そんなものがあるのか?!)を取り付けたけれど、しばらくすると症状が現れて改善がみられないとのこと。
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平成26年 DBA-NCP141 1NZ-FE CVT 走行距離67,000km
この年式の1NZ-FE、エンジン制御自己診断は、失火したシリンダを特定します。
クランクシャフトに取り付けられた複数の歯を持つ信号板が回転し、シリンダブロックに固定された磁気センサ(クランク角センサ)付近を歯の凹凸が通過することで回転信号を得ます。この信号の波形には、特定のシリンダ失火にみられる特徴があり、判定されるという仕組みです。
ですから、エラーコードがNo.4シリンダ失火を記憶している場合は、素直にNo.4シリンダの不調を疑います。
イグニッションコイルやスパークプラグといった点火系パーツの不具合が多いというのは否定しません。
しかし、最初から点火系部品全数交換してしまうのは妥当とは言えません。
最初の手順としては、No.4シリンダに装着していたイグニッションコイルとスパークプラグをそれぞれNo.4以外の違う場所にそれぞれ配置替え(例えばイグニッションコイルはNo.2シリンダ、スパープラグはNo.3シリンダとそれぞれ入れ替え)し、次の不具合発生時のエラーコードの変化(失火シリンダNo.の推移)を観察するのが本筋でしょう。
中古納車半年後で不調が現れ、早期解決したい気持ちは理解できますが、今回のように全シリンダ分のイグニッションコイルもスパークプラグも交換してしまうと、それ以外に原因があるのか、それとも純正ではない社外部品に問題があるのかなど、混乱や焦り、心配ばかりで、可能性の薄そうな部品交換まで手出ししてしまう悪循環に陥ります。
お預かり時は運よく症状が出ました。
いくら社外品だからと初期不良は稀ですが、ここはひとつ軸足を標準(純正)に戻しましょう。
信頼と安心の赤箱。スパークプラグは純正しか存在しない品番があります。汎用品は可能な限り使いません。
点火部品を純正にしても症状は出続けました。ここでやっと診断スタートになります。
以前に点火系以外でEGRバルブに不調があった1NZがありましたので、念のため確認しますが正常。やはりNo.4シリンダの不調を内燃機関の基本(点火、燃料、圧縮)から見ていきましょう。点火は新品純正部品ですので大丈夫とします。
次に燃料。エンジンを掛けたまま、聴診器でインジェクタの作動音を聞きました。すると4番のインジェクタの作動音が聞こえません。抵抗値を計測すると、
この通り基準値から大きく外れています。輸入車では比較的起きるインジェクタの不具合は、国産車(特にトヨタ)ではほとんど経験がありません。
貴重なサンプルです。
最初はワイパー不調のご相談でし… 続きを読む