全く問題なく10万キロ近く走ってこられた30プリウス後期にお乗りのお客さまから、足回りリフレッシュのご相談がありました。
電子デバイスを複雑に組み合わせたハイブリッドカーが、10万キロをノントラブルで走破することは、トヨタにおいては全く珍しいことではありません。
しかも、補機は電動化が進んでファンベルトは廃止。回生ブレーキと協調させた制動装置でブレーキパッドは殆ど減りません。もちろん燃料の消費は少ないです。消耗品といえば、エンジンオイル、補助バッテリー、タイヤ、そして今回ご依頼の足回りです。これらのリフレッシュを適時行えば、次の10万キロも快適にトラブルなく走行できると思います。
さて、
『新車外し』
というキーワードで、ほぼ新品のサスペンション部品がネットオークションやフリマサイトに出品されているのをご存じでしょうか。
新車の乗り始めの際に、外観重視の変更(主に車高ダウン)を行われることが割とよくあるのですが、そうした場合は、標準で装着されている純正サスペンション部品一式が余剰になります。
30プリウスは後期型になると特にリア回りのボディー剛性が見直され、それに伴う設定変更で、ショックアブソーバはじめ、サスペンション部品が綿密にセッティングされているのですが、例えば上のような外観を変更するアフターパーツを装着される方には全く不要な部品のようです。
今回のような標準仕様のリフレッシュの場合、新品で購入するよりずっと安価にサスペンション部品がセット販売されていますから、これを使わない手はないでしょう。
以前プリウスαの足回りリフレッシュも同様、新車外しサスペンションを一式交換しました。
クルマの設計思想とサスペンション整備(ZVW40W トヨタ プリウスα ショックアブソーバ交換)
前期・後期の別、乗車定員の違い、タイヤ&ホイールサイズの種類できめ細かく区別されているプリウスαのサスペンション。あえて前期モデルのそれを選んだのが正解で、車のキャラクターに合う味わい深い乗り心地が得られました。
今回の30プリウスについてもサスペンション部品の変遷を調べてみました。
ショックアブソーバが一番種類が多く、単グレードの通期で見ても4種(前期2種、後期2種)、さらにそれぞれにグレード違い、ホイールサイズ違いがあります。
30プリウスは、後期型でボディー剛性の見直しが行われて明らかに乗り心地がレベルアップしました。同じ新車外しのサスペンションでもボディが別物の後期型には、前期型用のチョイスは意図的に避けました。
アッパーマウントまでセットされている新しいサスペンション部品。
フロント側の取替のためには、ワイパー機構の部品を全離脱する必要がありますが、分解組み立てに対するトヨタの配慮には感服します。たくさんの部品を外して大変そうに見えますが、何の苦労もなく容易に脱着できるからです。
頑丈なアルミ合金のナックルアームに、大きな22mmサイズのナットで締結される堅牢なストラット式フロントサスペンション。
一方、リアはショックアブソーバとコイルスプリングが別軸に装着されるシンプルなトーションビーム式です。
驚いたのは、リアスプリングの自由長が使用過程で短くなっていたことでした。
自由長が短い分、1G車高(1Gライドハイト)も低くなっていたようで、リアの車高はリフレッシュ後10mmほど上がりました。
各部調整後、わずかな距離の試運転でも違いが分かるほど引き締まって安定感を増した30プリウス後期の乗り心地。お客様にお渡し直後の高速走行も安定していたようで安心しました。
さらに後日、市街地走行燃費が1割ほど向上したとのご報告をいただきました。タイヤの接地性の適正化は、ハイブリッドカーほどの省燃費車両では無視できない影響があるのかもしれませんね。
いつも遠方よりご来店いただきありがとうございます。ほんの気持ちですが、フロントバンパーの飛び石傷をタッチアップペイントで目立たなくしておきました。