『去年の夏はそうでもなかったのですが、今年は水温をモニターしていると最高103℃を記録したことがありました。そして寒い季節になっても急な上り坂を走行すると100℃を超えることがあります。全体的に温度が高めなのも気になりますが、高架道路の登りで95℃くらいで、下り始めると一気に86℃とか、こんな短距離で10℃近くも変化することに不安を覚えます。』
と、愛車のクーラント温度を常にモニターし、エンジンの調子を気にかけていらっしゃるのはジムニーシエラにお乗りのお客様です。
昔と違って水温計のない車がほとんどになり、こちらジムニーシエラは辛うじて液晶セグメントの水温計が備わりますが、中央付近がリニアでなく、故意に安定方向に導く回路が組まれていますので、運転者にはその細かな変動がわかりません。
↓こちらのような、OBDコネクターから水温センサーの信号を取り出してモニターできる機器が比較的安価に販売されていますから、クルマを(エンジンを)長持ちさせるためには、日ごろのクーラント温度の振る舞いを観察することが必須といえるでしょう。
PIVOT ( ピボット ) デジタルモニター【デジモ二】(レッド表示) DMC
平成27年式 ABA-JB43W(9型) M13A 5MT 走行距離 82,000km
オーバーヒートはエンジンに多大なダメージを与えることは明白ですが、オーバークールもよくありません。膨張比の異なる金属で組み合わされたエンジンは、クリアランスが適正になる温度があるからです。
そして、お客様が気にされているようにクーラント温度の変動も、各部クリアランスの変化を招きますから安定作動という観点からはできるだけ避けたい状態です。
近年のガソリンエンジンは、クーラント経路の加圧が108kPaと高めで、サーモスタット開弁温度も88℃や、中には90℃を上回る車種もあります。
したがって安定温度が100℃前後というものは珍しくありません。これは熱効率を少しでも上げる設計努力と思いますが、クーラント系を中心にそれなりに熱負荷が増しています。
改めて調べますと、こちらM13A搭載のジムニーシエラのサーモスタット開弁温度は82℃、全開は95℃とありました。夏場の103℃は確かに高めかもしれません。
サーモスタットの動きが鈍くなっている可能性がありますから、まずは新品交換を前提にサーモスタットの状態を確認することにします。
スイフトにも搭載されているM13Aのサーモスタットは決して作業性の良い場所に配置されていませんでした。
↓インテークマニホールドの下方
黒い樹脂製のサーモスタットハウジングは、エンジンのミッション側からアプローチする3本のM6ボルトで固定されています。標準作業時間から察するにインテークマニホールド脱着が正攻法のようです。
実際はオルタネーターを取り外すことで作業スペースが幾分楽になり、一番下のボルトに触れることが可能になります。上の2本は、長めの1/4エクステンションとユニバーサルソケットを組みあせたものをエンジンと平行にインマニの下の間隙に滑り込ませることで締緩可能です。
取り外したサーモスタット(右側)と新品(左側)の92℃時の比較です。
開弁はほぼ同時でしたが、新品は温度上昇に伴う反応が早く、最大リフト量も大きい結果でした。
市街地走行(一部上りの続く場所も走行)の試運転では、車載モニターのクーラント温度は90℃を中心に88℃~92℃でした。
ファンカップリング式のクーリングファンですから、電動ファン車と比較すると水温変動は元々大き目かもしれません。しかし、レスポンスのよい新品のサーモスタットになると、水温変動も少なくなると思いますので、今後の様子をお聞かせください。
↓このような格好のよいアナログメーターにもOBD式があります。
PIVOT(ピボット) GT GAUGE-60 水温計 OBDタイプ GOW