シフトダウン時、完全に車両を停止しないとセカンド(2速)ギアに入らなくなったスズキ キャリィは、走行距離の少ない車両から取り外した中古品のトランスミッションと換装して修理を終えました。
平成12年式 LE-DA52T F6A 5MT 走行距離 121,000km
状態の良い中古ミッションが入手できる場合、現在装着しているミッションのオーバーホールと比較してユーザーにとってのコストメリットが大きく、部品入手が容易になった近年は、込み入った分解整備の機会が減りました。
作業者側から見ても、中古部品との換装の方が修理完了までの時間がとても短くて、難易度も低く、作業の負担が随分軽減されますから、少ない人数で稼働している修理工場の場合は積極的に中古品もしくはリビルト品を使用していることと思います。
さて、今回の故障でギアが入りにくかった原因を探るために、トランスミッションを分解してみます。
このように一つのギアやベアリングを取り外すのにも、人力では出来ない箇所が多いのがミッション分解作業の特徴です。ギアの縁に強力で薄い爪を引っ掛けて引き抜く作業の様子です。これは5速ギア(カウンターシャフト側)です。メーカーがサービスマニュアルに記載する各種専用工具(SST)を使用すると難なく作業ができるのですが、高価な特殊工具を全て揃えることは現実的ではありません。色々な汎用工具や当て具を工夫し、場合によっては加工して分解組立を行います。
メインの軸に複雑に組み合わされたギアも
慎重に分解して全て軸から取り外します。
組方向や位置が少しでも違うと組み付けられないように構造的に工夫されていますので、間違いはほとんどありませんが、組立には強力な油圧プレスを使いますから、少しいびつに圧入するだけで簡単に部品を破損させます。
ミッションの最深部に触れたのちに、慎重に組み立てたそれを搭載したクルマが走りだしたとき、単にミッション交換した作業では味わえない達成感や面白さがあります。エンジンも同様で、コストメリットを優先するため分解整備が減っているのをとても残念に思います。
ローギア、セカンドギアに組まれたシンクロナイザーリングのキー溝に著しい摩耗。これでは、ギアの回転同期がうまくいかないはずです。
傷んだ部品を一通り見積もると、中古トランスミッションが何基か買える価格になりました。
分解組立の感覚鈍化を防ぐため、古いパーツを少し工夫してギアの入りやすいミッションとして再組立てし、緊急・応急用ミッションとしてストックすることにしました。
↓リビルトミッションの場合は、概ねこのような価格帯で販売されています。
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