前回記事『レガシィツーリングワゴン10万キロ目前の車検整備(TA-BH5 EJ20ターボ)』の続きです。
マニュアルトランスミッションを載せた稀少なBHレガシィは、走行距離10万キロ目前になりました。
先月、継続検査の受検に加えて、タイヤ交換やオイル漏れ修理その他を完了し、一旦お返し。各部整備後の調子を約1か月体感いただきタイミングベルト交換作業に取り掛かります。
平成14年式 TA-BH5 EJ20ターボ 5MT 走行距離 99,000km
エンジンルームの化粧カバーやエアダクト、ラジエータを離脱してタイミングベルトカバーを取り外すと、左右バンクに渡って取り付けられた長大なタイミングベルトが現れました。
エンジンルーム中央のクランクシャフトを挟んで左右に2気筒ずつ真横にレイアウトされた水平対向エンジン。
ラジエータを取り外すと意外に作業スペースは浅く広く、楽な姿勢で作業を進められます。
クランクプーリーを止めている対面幅22mmの大きなボルトは、規定締付トルクは180Nm付近ですが、緩める際は固着のため大きなトルクを必要とします。
そんな時、ハンドインパクトレンチはとても便利です。(《参考記事》スナップオン扱い ハンドインパクトレンチ クランクプーリーボルトなどに)22mmのインパクトソケットを装着し、5ポンド程度のハンマーを数回振り下ろすだけで簡単に固いプーリーボルトを緩め取ることができます。
そして、水平対向ツインカムターボエンジンの2つ目の難所、左バンクのカムスプロケットへのタイミングベルト装着です。
合いマーク位置でタイミングベルトを取り外すと、この2つの大きなカムスプロケットはバルブスプリングの反力で大きく動きます。それだけ不安定な位置だということです。右バンクにも掛かる1本のタイミングベルトを正確な位置で組み付けるために2つの不安定なスプロケットを1人の人力で支えるのは至難です。
そこで、廃材を利用してカムスプロケット相対位置固定のSSTを自作しました。平板に対面幅10mmのボルトナットを取り付けて溶接した簡単な冶具です。カムスプロケット中心の10mm凹ヘックスに宛がいます。
これがあると作業性は格段に向上します。
そして、同時交換のウォーターポンプにはホース接続部と、インペラに浮き錆や腐食が見られました。
同様のウォーターホース接続部はエンジンルームの他の場所にもいくつかあり、同様の状態になっていると思います。今後の経過を慎重に観察する必要があるでしょう。クーラント減少の早期発見のためには、オーナー様のラジエータ液量の点検が欠かせません。
タイミングベルトのわずかな伸びでバルブタイミングが設計仕様から少し離れていたのが新品ベルト補正され、エンジン回転のフィーリングが改善することがあります。
お渡し後の感想を楽しみにお待ちしております。
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Riki says
いつも丁寧な作業をしていただきありがとうございます。
音、フィーリング、全て 変わりました。
アクセルのつきが良くなったとでも言うのでしょうか!? トルクの立ち上がりが早くなった感じがするのと、嫌なノイズが無くなったので、エンジンの音が素直に聞こえるようになりました。
10万キロを前にして、今までで一番調子が良い感じがしています。
この型のレガシィに乗ってもう10数年になりますが、やっと本来のあるべき姿に出会えた気がして嬉しく思ってます。
これからも色々相談に乗ってください。
よろしくお願いします。
たけしくん says
Rikiさん タイミングベルト交換後のお車の調子を伺い、とてもうれしく思います。EJ20はオートテンショナ式のため一部の輸入車と違ってバルブタイミングの調整が不要な反面、ベルトの「伸び」がタイミングの遅れを招きます。わずかな違いと思いますが、いつもお乗りになられているオーナー様はその違いが大きいことを感じていただけると思います。当方の都合でタイミングベルト作業を別の日程でご協力いただき落ち着いて作業することができました。いつも遠方よりご来店ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。
shou says
初めてのコメントお許しください。
いつも楽しく拝見させていただいています。
オーナーと車のことを常に考え丁寧な作業をしていらっしゃるのがいつも感じられます。
また、この記事は自分と同じBH5レガシーの整備でとても参考となります。
今回私もタイミングベルトの交換を整備工場に頼んでやりましたが、タイミングベルト、ウォーターポンプは交換しましたが、カムシャフトシールは交換しませんでした。
依頼時は交換する見積りだったのですが実際の作業時はカムシャフトからのオイル漏れがなかったので交換しなかったということでした。
クランクシャフトはオイル漏れを起こすことがあるが、カムシャフトはほとんど見たことないので大丈夫ですとも言っていましたが、せっかくタイミングベルト等交換するのに、カムシャフトシールを交換しないというのは安心して乗れないような気がしています。
実際大丈夫なのかどうかは自分にはわかりませんが、誰に聞くこともできず、この度思い切ってコメントさせていただきました。
たけしさんがRiKiさんのBH5のタイミングベルトの交換時やはりカムシャフトシールは交換されていらっしゃるのでしょうか?
或いは、交換の必要はないものなのでしょうか?
ご指南いただけますと助かります。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
たけしくん says
shouさん
はじめまして。コメントありがとうございます。
また、いつも記事をご覧いただいているとのこと、重ねてお礼申し上げます。
ご質問の内容を拝見しました。
オイルシールからのオイル漏れに備え、タイミングベルト交換時、「ついでだから」カムスプロケットを取り外した先にあるオイルシールを同時に交換すると予防になるとの考えの一方で、
EJ20の場合は、カムスプロケットを取り外す時、スプロケット固定ボルトを締緩する際、年代ごとに異なる特殊工具(SST)を用意する必要があることと、単純に作業時間が大幅に伸びてしまうという「ついでだから」とはいかない事情があります。そして正規ディーラーや専門店ではない整備工場では、滅多にない作業にSSTを用意するのが難しいかもしれません。
エンジンオイルの交換管理が適切なエンジンに関しましては、shouさんがお世話になられた整備工場の方がおっしゃるとおり、回転数がクランクシャフトの半分のカムシャフトのオイルシールからのオイル漏れはほとんど見かけません。水平対向エンジンは、他のエンジンの配置と違って特にカムシャフトシール付近の熱負荷が少ないのかもしれません。
RikiさんのBH5は、オイル漏れはありませんでしたが、オイル漏れの可能性の比較的高いクランクシャフトシールのみの交換しました。
また、EJ20エンジンのタイミングベルトカバーは外側も内側も樹脂でできています。内側のカバーにナットが埋め込まれていますが、熱負荷の大きいエンジンはナット周辺の樹脂が割れてしまいます。破損した場合はカムスプロケットを取り外して交換する必要があることと、熱負荷がオイルシールにも相応に掛かっていると考えられますので、この場合はカムシャフトシール交換は同時に実施します。
分解・組み立ては、失敗がないように丁寧に行うのが基本ですが、経年しているエンジン回りは部品が非常にデリケートになっていますので、分解整備は過剰になりすぎないことも大切だと思っています。
さらにご質問がございましたら、問い合わせフォームからお願いします。
shou says
たけしさん
ご返信ありがとうございます。
詳しいお話、とても勉強になりました。
依頼した整備屋さんが車の状態を見ての判断をしてくださったのだということがたけしさんのお話をお聞かせいただいてわかったような気がします。
おかげで、安心することができました。
今後もBH5を長く乗っていこうと思います。
これからも楽しみに拝見させていただきますので、なにかありましたらどうぞよろしくお願いいたします。(質問は問い合わせフォームに致しますね)