三菱アウトランダーの足回りのご相談がありました。
平成20年式 DBA-CW6W 6B31 走行距離 47,000km
まだ走行距離5万キロに到達していない車の乗り心地に関するご相談です。純正ノーマルの設定に違和感をお感じになられているのかもしれないと、お預かりしてすぐ現在の状態を確認するため試走します。
走り出し後、程なくしてご依頼の理由がわかりました。走行中の特定の状況で「ふらっ」と車体が不安定になるときがあるのです。
この収まりの良くない不快感は、ショックアブソーバやコイルスプリングといったサスペンションの主要部品の動きではなく、例えばタイヤの剛性不足と似た感覚でした。
お客様は、改善を期待してKYBのNewSRスペシャルへの換装をご希望でしたので、僕の率直な感想をお伝えした上で、ショック交換作業に取り掛かりました。
フロントは一般的なマクファーソンストラットです。
一部車種に採用されているダブルウィッシュボーン形式と大きく異なるのは、ショックアブソーバそのものが車体の横方向にかかる力を受け止めていることです。
こちらの写真に補助線を引きました。
ショックアブソーバの軸と、コイルスプリングの軸がある角度をもってオフセットされています。この角度のおかげで、ストラットにかかる横方向の力を受け止めつつ、ショックロッドに過度な負担を掛けずに円滑にストロークさせることができます。それは乗り心地の向上や、ショックの寿命に関係するでしょう。
ノーマル形状やノーマル車高はサスペンションが適切に動作するように設定されていますので、よほどの理由や意図がないかぎり変更しないのが無難です。
回転方向に自由に動くコイルスプリングアッパーシートには取付位置が決められていますから、不適切な装着状態にあるものは、分解組立の時に正確な位置に補正します。
今回、傾向的に不思議に感じたのは、リア側のショックアブソーバでした。
装着前に手の力でショックロッドをなじませるのですが、予想に反して純正よりKYB NewSRスペシャルの方が柔らかいのです。感覚的には3割ほど柔らかい印象です。双方左右差がありませんから、極端な劣化や初期不良ではないと思います。
そして、1台分のショックアブソーバ装着を終えて試運転を繰り返し、1Gでサスペンション各支点を締め直しますと、気になっていたふらつきが完全に解消されました。
硬めにチューニングした純正ショックアブソーバが、アッパーマウント(ラバー製)を余分に動かしていたように思います。
「一車種ごと実車による開発」と書かれたKYBのWebサイト。一律同方向のチューニングではなく、場合(開発者の感性?)によっては逆方向もあるということでしょうか。
大変興味深い作業のご依頼、誠にありがとうございました。
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