冷凍庫が全く冷えなくなったとスズキ キャリィの特別装備車(中温冷凍車)が入庫しました。
平成17年式 LE-DA63T K6A 3AT 走行距離 234,000km
運転席のエアコンと荷台に乗る冷凍庫の冷凍システムは共通ですから、運転席も相当暑かったと思います。
自動車用のエアコンシステムの基本原理は、いわゆる「蒸気圧縮冷凍サイクル」です。
例えば、消毒用アルコールを皮膚につけるとアルコールの蒸発で冷めたく感じますね。この吸熱作用を積極的に利用したのが冷房の原理です。そして蒸発したアルコールを全て回収して液化し、再利用している仕掛けだとお考えいただければよいかと思います。
自動車の場合、アルコールではなく、ハイドロフルオロカーボンの一種、HFC134aという冷媒を、閉じられた経路に循環させています。冷媒の状態変化は大きく以下の4つです。
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①圧縮(コンプレッサー)
②凝縮(コンデンサー)
③膨張(エキスパンションバルブ)
④蒸発(エバポレーター)
を順に繰り返します。()内はそれぞれの冷媒状態変化を担う装置の名称です。
システム圧点検しますと、冷媒圧力はゼロ。完全に回路から冷媒が抜けてしまった状態です。原因はコンプレッサー(圧縮器)からコンデンサー(凝縮器)に至るフレキシブルホースの劣化でした。
断熱(等エントロピー)圧縮された高温高圧の冷媒が通過する経路ですから、継ぎ手に備わるゴムのパッキン(Oリング)やフレキシブルホースは比較的早期に劣化します。劣化の著しい部位のOリングと新品ホースを交換して、冷凍庫と車室内の冷気は回復しました。
さて、次に同じくエアコン冷え不良で入庫しましたのはスバル サンバー 平成18年式 LE-TV1です。
4年前、こちらの事例と同様、高圧ホースから著しい冷媒漏れが見つかり、処置したのですが、今年になって冷房が効かなくなったそうです。
平成18年式 LE-TV1 EN07 5MT 走行距離 139,000km
システム圧を点検しますと、冷媒はほとんどありません。閉じられた経路で循環する冷媒は異常が無ければ、ほとんど減少することはありません。
4年前に交換したホースとその継ぎ手部分には異常はなく、その他経路の目視点検をしますが、4年掛けて徐々に抜けていった冷媒漏れの痕跡は見当たりませんでした。冷媒に混合して循環しているコンプレッサーオイルが、漏れ痕の重要な手がかりですが、HFC134aと混合されている化学合成油は加水分解するため、微弱な漏れの場合は洗い流されている場合も少なくなく、今回は経路内に蛍光剤を注入して、一旦お返しすることになりました。
吸着性に優れた蛍光剤は、ブラックライトの紫外線で励起され、目視点検を助けてくれます。
近年の真夏は冷房無しでは大変辛いものです。可能な限り調子を保ちたい冷房装置ですが、基本的にメンテナンスフリーです。
特に冷媒には適量がありますので、必要以上の追充填や添加剤の注入などは各部の故障を招く場合がありますので、不調を感じない場合は何もしないことが好調の秘訣です。
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