「最近、走行中にフロントブレーキパッド摩耗警告灯が点滅することがあるのと、低速でブレーキをかけるとジャダーがあります。一度診ていただけないでしょうか。」
と、ご相談がありました。
平成13年式 GH-916C1 V6 3.0 6MT 走行距離 65,000km
実は1年と少し前、同型の中古車購入についてメールでご相談があったのが、お客様との出会いでした。アルファロメオは、その魅力を五感で愉しむことが第一、と僕は思います。そのためには、オーナー様にとってネガティブでも、メカニックの立場からの情報をお伝えする必要があると考え、簡潔にお返事申し上げました。
そして熟考され、パートナーとなったのは 3.0リットルのV6ユニットを搭載するGTVでした。
お約束の時間に、勇ましいエンジン音が遠くで聞こえたかと思うや、濃紺の流麗な姿が店の前に現れました。
初めてお目にかかるオーナー様と窓越しに右手でご挨拶。僕は、促されるままドライバーズシートに腰を沈め、静かにシフトアップしながら千本通りを駆け下ります。
最初の赤信号で停止する際、ご相談の制動力強弱がタイヤ回転周期で起こることが確認できました。そして不規則にメーターパネル内で点滅する電気式ウエアインジケータも。
センサーを内蔵するフロントブレーキパッドを取り外して確認しますと、それは紛うことなき純正品で、左の内側でセンサーが露出するところまで磨耗し、使用限界を運転者に知らせていたようです。
しかし、パッドの磨耗と制動力不均一は関係があるのでしょうか?オーナー様は、パッドと共にディスクローターのことを心配されていました。もし、ディスクローターに面歪みがある場合、60km/h程度からのブレーキングで、ブレーキペダルやステアリングに相応の振動があるのが一般的です。ところが、今回の症状確認では、このような振動はありませんでした。
今一度ディスクローターを観察します。
すると、長期間放置した場合などに見られるディスクパッド密着の痕跡が確認できました。
パッドの材料が一部ローター表面に癒着し、制動に違和感を生じていた可能性と、パッド材料がローター表面に膜を形成し、摩擦不均一を招いていた可能性、両方をサンドペーパーで削ぎ落とします。研磨作業開始直後、指先からサンドペーパーを介して摩擦力の強弱を周期的に感じます。
それは一定時間回し続けると均一な抵抗になり、研磨作業終了を教えてくれます。
さらに、少しでもディスクローターの振れの原因を排除するため、ローター取り付け面、ホイール取り付け面の浮き錆びを清掃します。
ここでようやくパッドの装着です。ランチアのシンボルが印刷された真新しい純正パッド。
組み付け終了後の試運転では、すっかり低速ブレーキ時の違和感が無くなりました。不快な要素がひとつ解消しただけなのに、多くのアルファロメオらしさを感じやすくなります。
微力ながらお役に立てたことを大変光栄に思います。この度は作業のご依頼誠にありがとうございました。
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はがくれE says
サビがひどいのとかは、リフトで上げてドライブ状態でやってました。でも、どうしても裏側が研げないのと、均等に左右が回転してくれないので、どうにかならないか考えてました。今度このやり方試してみたいと思います。
たけし says
はがくれEさん
この方法は、先人に教わりました。本格的な面研は旋盤を備えるところにお願いしています。どうぞご参考になさってください。