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電子制御エンジン、アイドリング不調の原因は(スズキ エブリィ DA64V K6A ISCV ECU)

前回『電子制御エンジンの不調(スズキ エブリィ EBD-DA64V ISCV ECU)』の続きです。

今年の夏、エアコンを稼動させていると信号待ちなどで頻繁にエンジンが止まってしまうスズキ エブリィ。エンスト後の再始動は容易。

平成19年式 EBD-DA64V K6A 5MT 走行距離 53,000km

電子制御のエンジンはアイドリング回転も電子制御。ISCV(アイドルスピードコントロールバルブ)と称される弁で、アクセルを踏まない状態で吸入空気の通り具合を連続的に変化させて設定した回転数に保持されます。

こちらのステッピングモータ式ISCVは、内部に4つのステータコイルがあり、コントロールユニットからの出力により順に通電されます。通電の順序で正転、逆転が決まり、弁の軸に刻まれた螺旋歯車を介してモーターの回転運動を弁の直線運動に変換する仕組みです。

吸気系に使用する洗浄剤がステータコイル内に浸入してコイルの絶縁被覆を破壊してショートに至るという情報がありますが、こちらのエブリィにはそのような洗浄剤を一度も使用したことがありません。

エンストが起こることを確認して手早く4つのステータコイルの抵抗値を測定しますが基準値内。懇意の販社サービスに問い合わせると、コントロールユニットとISCVを両方交換してくださいと… コントロールユニットのISCV出力に過電流保護がないらしく、ステータコイルのショートでコントロールユニット内部が破損するとのこと。

このISCVの不調はフォルト情報としてコントロールユニット内に記憶されないのが、診断を難解にしている原因のひとつです。
まず最初に実施したスロットルボデーの清掃だけでは変化がありませんでしたので、エンジンコントロールユニットとISCV、リサイクルパーツで手配を済ませ、症状確認のための走行を繰り返します。
すると、いくつかの現象がわかってきました。

エンジン冷機から走行、停止状態に関わらず、10~15分ほどエンジンを稼動させているとアイドリング回転が低くなり、少しアクセルを開けると回転保持できずにエンスト。

1時間ほどエンジン停止しているとアイドリング保持の機能は回復します。そして、しばらくするとアイドリング不調になり同じくアクセルを少し開けるとエンスト。エアコン稼動時はエンジン負荷が変化しますからアクセル操作に関わらずエンストする場合がありました。

そして、エンストする状態になったとき、イグニッションをOFFすると聞こえていた「カタカタカタ…」というISCVのイニシャライズ(?)の音が何だか不規則で、音も頼りない。

さらに、イグニッションONすると「ジジジジ…ジジジ…」と小刻みな音がISCVから聞こえます。
アイドリングが好調なときはISCVのイグニッションOFF時のカタカタ音が力強く規則的で、イグニッションON時は無音です。

手配した中古品ISCVを好調時、不調時それぞれにつないでみますと同じ状態を示すことがわかりました。

すなわちコントロールユニットの出力に問題があるということです。
内部を確認するために不良品の密閉筐体にエアソーの歯を宛がいます。

多層プリント基板に所狭しと配置される各種SMD。集積化が想像以上で、どの素子がどんな役割かはほとんど分かりません。そして目視では若干表面のコーティングに荒れがありますが、パターンの腐食やブリッジなど目立つ損傷はなさそうです。

驚いたのはパワー素子で、その熱はプリント基板に放出している様子です。一昔前のパワー素子と違って効率もいいのでしょうが、アルミのヒートシンクが見られないと何だか不安です。

内部の不調箇所を特定することは出来ず残念でしたが、よく目にする故障事例のISCVステータコイルのショートでないことは明らかです。同様の故障でもいくつかパターンがあるということでしょう。

傍らではリサイクル品のコントローラで調子を取り戻して元気に稼動するK6Aエンジン。懸念していたISCVの熱は、元のものも取り寄せたリサイクル品も同じ程度でした。あんなに熱を発するのですね。内部ステータコイルに影響しないのでしょうか?

改良されていると思われるリサイクル品のISCVは音も静かですからこちらを装着して納車いたしました。

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