先週タイミングベルト及びウォーターポンプの交換作業をした三菱デリカスペースギアのお客様がご来店。タイミングベルト交換実施のステッカー貼付しようとボンネットを開けたところ、クーラントと思われる飛沫がタイミングベルトカバー周辺に確認できるとのことで慌てて点検。
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三菱 デリカ スペースギア タイミングベルト交換(その2、GH-PD6W)
当方の不行き届きをお詫び申し上げますとともに、大事に至る前にご指摘いただき心より感謝申し上げます。滲み出しは微量でしたが、一滴も漏れてはいけない大切な部位です。十分確認後にお渡ししたつもりでしたが、確認不足でした。作業後 約200km走行されていました。
平成17年式 GH-PD6W 6G72 4AT 走行距離 93,000km
確かに飛び散っているのはロングライフクーラントです。にじみ出しはラジエータアッパーホースのエンジン側ジョイント部。クーリングファンの風で周囲に撒布されていますが、ほとんどが乾燥し、下に滴り落ちるほどの酷いリークではないようです。
作業の過程でラジエータを脱着、新品のラジエータホースに交換しました。もちろんホースクリップも新品。アルミ製のジョイント部は腐食もなく極めて良好なコンディションで、どうしてクーラントがにじみ出すのでしょう??ラジエータキャップを開けて内圧を開放した状態なのに、クリップを緩めるだけでクーラントがにじみ出し、いとも簡単に抜けてしまう新品ラジエータホース。
古いラジエータホースのクリップ装着痕を見ると、経年変化で深く入り込み、クーラント漏れ出しを制止できていたようですが、新品ホースでは十分なクリップ締結が得られてない様子です。
ジョイント部の大きさを計測します。
ホースジョイントは一般的に先端の外径が太くなっています。この形状は液体の漏れ止めとホースの抜け止め、両方の機能でしょう。ラジエータ側とエンジン側で実測0.5mmの外径差があり、もちろん滲み出したエンジン側が小さいです。
アッパーホースはロワーホースに比べて短く、エンジンの動揺に対して無理がかかります。またロワーに比べて水温も高く、ジョイント部にかかる負担は随分大きいといえるでしょう。
しかし、このような比較的容易に想像できる負荷に対して、十分な措置、対策が取られているだろうと、僕は純正パーツを選定しています。
例えば、スバルの同様のホースは潤滑措置無しには挿入が困難なキツい嵌まり込みで、クリップが要らないくらいです。また、スズキの一部の部位には、新車時はクリップで、補給部品は締め込みタイプのバンド。
整備後の様子の異なる環境で強固に縛り付けるような配慮がされています。
新しく取り寄せたホース&クリップも漏れに対しては十分とは思えなくなり、再発防止のために汎用ホースバンドで固定する独自の対策を施しました。そして、ロワーホースのエンジン側については、アッパーよりクリップの食い込みが深く、ホースの取り回しも余裕があり、現状リークは見られないのでそのままとしました。
本件は、部品商及び、正規販社に報告予定ですが、いつも暖簾に腕押し、ぬかに釘… 製造元に見解を求める確かな手立てが欲しいと感じます。
この度は、お客様には大変なご迷惑とご心配をお掛けいたしました。再度十分な確認後お渡しいたしますので今しばらくお待ち下さい。
かまだ says
驚きました。これほど重要な部位の寸法設定でミスるとは同業者として信じ難いです。
ただ旧ホースで起こっていないのであれば、今回のホース内径が規定外の可能性があります。
また近年ホースの製法が変わっていて、先端の外径が細くなっている場合もあり、バンドの締め代が足りなくなった可能性もあります。この場合も本来は設計的に管理されるべきでしょう。
たけし says
かまださん
自動車設計・開発に携わる方からのコメントを頂戴し、とても心強く感じます。
まずは部品商経由で不具合のあったホースとクリップの返送、そしてメーカー見解を求める手順を踏みたいと考えています。
kc-auto says
珍しい症例ですね 三菱ディーラーメカニックだった時も、独立した現在、自分の工場でも、スペースギアのラジエターホース類は幾度と無く交換していますが、このような症状は経験無しです
最近、今年の1月に、V6エンジン タイベル ウォーターポンプ 等々交換したスペースギアが、タイヤ交換諸々で入庫したので、各部点検しましたが、交換した アッパー、ロアの各ラジエターホース異状ありませんでした ホースの製造過程での不良とかが原因でしょうかね・・
自分の作業ミスではないし、第一にご依頼頂いたお客様にご迷惑やご心配を掛けてしまうことが一番心苦しい貴殿のお気持ち、同業者としてよく分かります。
たけし says
kc-autoさん
コメントありがとうございます。
僕も同様の事例がないかWebサーチしましたが、インターネット上には見つかりませんでした。とても珍しい事例のようです。部品商経由でメーカー見解を求めるつもりです。
同業の方からのメッセージ、とっても嬉しいです。
カクシカおじさん says
こんな事例があるのですね。興味深く拝見しました。
この場合はお客様がたまたま? お気づきになったから良かったものの、普通はこんな不具合はメカに強い人でないとなかなか気が付かないですよね。
冷却水のトラブルは致命傷につながるので、私は1ヶ月に1回程度と、遠出の直前には必ず冷間時に、ホイールナットの緩みと、タイヤの空気圧と、エンジンオイル量と、ラジエターキャップをじかに開けて冷却水量を確認することにしています。
車の製造メーカーは近年針式の水温計は不要と考えて(コストダウンのためなのか?)警告ランプにとって代わっていますが、あれ不意なトラブルの時には一抹の不安を感じますよね。
日本車の純正の針式水温計、適正温度の時には全く針が動かないよう小細工をしているけれど、やはり安心感は違います。
高価だと思いますが、私は純正センサーが感じている実水温を表示するピポットのX2Cをそのためだけに取り付けていますが、オーバークールも含むサーモスタットの不良も含めて、異常が即座に判別出来るのが良いです。ただ自分の車の適正水温を理解しておく必要はありますけれども。
たけし says
カクシカおじさんさん
皆様のようにクルマの重要な部分をご理解いただいていると、様々なトラブルを未然に回避できます。
このようなレアケースであると尚更です。
背筋が凍る事例でしたが、今回は本当にお客様に助けていただきました。感謝しております。
ハリネズミ says
あれからクーラント漏れは全くなく、もう大丈夫なようです。
で、タイミングベルト交換後の変化について…
燃費が格段に良くなりました♪と言っても、元が悪過ぎるんですけどね。
ここ3回の給油での実績です。満タン法ですが、出来るだけ正しく測るのに、液面が見えるくらいまで入れてみました ^^;
7.4km/h:兵庫県北部往復(縦貫道一部走行)
5.8km/h:市内通勤
7.9km/h:小浜(福井)往復
遠出時は前後の通勤を含んでいるため、少し差が出たようです。信号が多くなくストップ&ゴーでの燃料消費が少ないですが、山道なので高速ほど燃費向上しない車です。
交換前、通勤では5km/l前後でしたし、遠出は一概に比較し難いもののほぼ高速だけの70~80km/h走行で8km/lが最高でした(普通に高速を走ると7km/l強程度)。ちなみに、カタログ値は7.7km/lだったと思います。
エンジン音も少し変わったように感じたのですが、これはファンベルト交換も影響しているのかもしれません(テンションを含め)。
以上、ちょっと嬉しい報告でした
たけし says
ハリネズミさん
うれしいお知らせありがとうございます。
クーラント漏れの件は、大変ご迷惑をおかけいたしました。その後、問題ないとのことで安心しました。
燃費、エンジン音共、よい変化があるのは、適切なバルブタイミングになっているからかもしれません。交換前のタイミングベルトは多少の「延び」があるぶん、バルブタイミングが遅れ気味だからです。
国産車はバルブタイミングの微調整ができませんので、新品のベルトを装着したときは、調子の変化を体感いただけることがあります。
燃費に関しては、ギアオイルを交換したことも多少影響がある気がします。
スパークプラグの交換もフィーリングに影響がありますので楽しみですね。
ご丁寧なご報告ありがとうございました。
ハリネズミ says
そういや、2駆4駆の切り替えが早くなりました。特に今まで4WD→2WDの切り替えに少々時間が掛かり(切り替え中はインパネの表示が点滅)、軽いアクセルのオンオフで早く変るようにしてたりしてました。
トランスファーオイルの交換が良かったのかもしれませんが、今はほぼ瞬時に切り替わります(直進中で加減速しない状態)。
プラグ交換をどうするかは特に急がないため時期を検討中ですが、差を体感するのにも暫くは今の状態で1シーズン程度様子をみたいと思います。またお願いするかもしれませんので、その時はよろしくお願いします。
たけし says
4WD→2WDの切り替えで、そこまで差が出るとは予想外でした。ギアオイル交換の効果だと思います。インジケータが点滅しているときはうまく同期が取れない状態だと思います。スバルのギアオイルはそういう場所にも効果がありそうですね。
プラグ交換については、先にお見積りしたとおりになります。スケジュール次第ですので遠慮なくご相談ください。