他所でショックアブソーバを組んだが、もう一度組み直して欲しいとのご依頼です。
平成11年式 GF-916S2B 2.0TS 5MT 走行距離 99,000km
ショックアブソーバやサスペンションスプリングの組み付けで一番大切なのことは、サスペンションアームの作動中心を考慮することです。車高にわずかでも変化がある場合、作動中心を意識した組付けをしないとショックアブソーバとスプリングの理想的な作動を大きく阻害することになるからです。これは、簡単にいうと乗り心地に影響を与えます。
「ショックアブソーバやスプリングをスポーツタイプに交換したから乗り心地が悪くなるのは当然だ」
という間違った解釈は、最初に申し上げましたサスペンションの基本的な組み付けを実施していない例が数多くあるからではないかな、と最近思うようになってきました。きっちりとセッティングされたサスペンションは、例えそれがスポーツタイプでも決して乗り心地が悪くないのです。
さて、アルファロメオ 916スパイダーです。他所で組まれたそのままの状態で試運転をします。
この年代のアルファロメオ特有でしょうか、ステアリングコラムのバタつきがあります。これはサスペンションメンバーにステアリングラックが固定されているからだと思います。路面からの衝撃はサスペンションがすべて吸収するのが理想ですが、吸収しきれなかった部分がサスペンションメンバーに伝わり、それが、ステアリングラック→ステアリングコラムへと伝わるのでしょう。
ステアリングがバタつくと、ダッシュボードとは連動しない動きが見て取れ、まるでボディーが弱いと誤解される所以なのかもしれません。
サスペンションの調整は主にリア側を行いました。
セミトレーリングアームの要素を持たせたマルチリンクです。各支点を締め直し、最後にトーを確認します。
オープンカーという先入観からボディー剛性が低いと誤解されがちですが、このサイドステップの太さを見て下さい。とても頑丈そうですよね。
調整後、試運転しますと、ステアリングコラムのバタつきが随分小さくなりました。そして驚いたことに幌を開けて走るほうが、しっとりと落ち着くのです。まるでホイールベースが伸びたような感覚。
お客様は、ノーマルの205/50R16のタイヤサイズを、205/55R16に変更されていました。操舵輪の干渉が心配でしたが通常走行では問題にならず、むしろ路面を的確に捉えます。フェンダーアーチとのクリアランスを含めてベストマッチかもしれません。
このまま高速道路に持ち込みます。幌を開け閉めして何度か試しましたが、やはりオープンの方がはっきりと安定します。オープンで走行中、Aピラーの先端に手を当てると、激しくたわんでいるのが判りました。ここで不要な力を逃がしているようです。
幌を掛けると、Aピラー先端を幌骨が抑え込んでしまうから、逃げ場がなくなった力があちこちに影響するのではないかと考えます。
アルファスパイダーはオープンが主、幌はあくまでもテンポラリーユースなのですね。ストラットタワーバーを始め、さまざまなボディ補強パーツと称する社外追加部品がいかに車のバランスを崩すかがわかったような気がしました。サスペンションをきちっとセッティングしたからこその発見でした。
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satoru says
いいね。理屈より屋根のない車は、太陽を見ながら、星を
見ながら走るのがいいですよね。まさに道は星に聞け。みたいな
ノリで。
たけし says
satoruさん、コメントありがとうございます。
オープンカーに乗るのは、以前お世話していたユーノスロードスター以来8年ぶりです。
今回は、お客様のお車の調整に神経を集中していましたので、楽しむ余裕はほとんどありませんでしたが、同じ道を走っていてもまるで景色が違いますよね。
susie says
私もアルファではないですが、オープンを所有しています。
以前は、車の基本は剛性だと思って疑いませんでしたし、明らかにオープンカーは剛性が低く感じます。
でも、なぜか、オープンにしてる方が、しなやかざを感じるんですねえ。ボディ全体のたわみもうまく利用して、全体のバランスをとっているのでしょうか。ちょっと目からウロコの気持ちです。
これからオープンが気持ちいい季節、でも今年は花粉症がひどく、マスクをして乗ってます。
たけし says
susieさん
オープンの方がしなやかというのはオーナー様も体感されていたようです。
アルファロメオは、絶妙なボディバランスで成り立っているような印象があります。
ショック&スプリングとその組み方がいい加減だとわかりにくいのですが、案外知られていないことなのかもしれません。
池ちゃん says
念入りな試運転はたけしくんの特徴です
まずは修理前にどこが問題なのかを
運転席と助手席の間で話し合います
修理後にはその点が解決されたかを確認します
今回は足回りの調整の見極めでした
閉店後の夜間に行いました
今回も高速道路へ 滋賀県の南東部まで行きます
たけしくんに調整後の916の高速での乗り味を見てもらうのが目的でした
楽しんで走るうちに
以前2時間ほど一気に走った時
体感的にトップがない方が心地よかったことを思い出しました
「寒いけど次のサービスエリアまでトップをおろしませんか」とたけしくんに伝えました
気温は2~3度だったはずです
実証的なたけしくんは「ザブイ~」の一言を飲み込んで
「はい やってみましょう」と答えてくれました
手早くトップを格納してランプウェイを上がりました
すると
「こっちの方がずっといいです」
滑らかな乗り心地に驚いた様子でした
トップがない方がずっと滑らかな乗り心地です
まるでタイヤと路面の間に毛足の長い絨毯が敷かれているかのようです
(剛性の低いスパイダー+モンローのスポーツショック+トップなし+車はアルファロメオ)
この式の答えは
「ゴツゴツした所謂かっこいい乗り心地で
ロールなしにコーナーを回るため快適さは犠牲になって当然」
間違っていました
種あかしはAピラーから振動が逃がされていたのですね
京都まで寒い中トップなしで走ったのは言うまでもありません
スパイダーの正しい乗り方ですね
たけし says
池ちゃんさん
過日は深夜にもかかわらず、長時間お付き合いいただきありがとうございました。
僕はオープンで高速走行は初体験でした。
いろいろなことがわかり大変充実した試運転でした。
ただし、適度な防具は必要かもしれませんね。