登坂路を3~4速で走行中、「意識的に」アクセルと踏み込むとクラッチが滑り出すという現行ハチロクをお預かりしました。
平成26年9月登録(平成25年1月製造)DBA-ZN6 6MT 走行距離 31,000km
いつも遠方よりご来店いただいているお客様です。最初に拝見したのは約2年前、走行距離は18,000kmと少しでした。製造年月と初度登録年月に差があるのは、ご購入前、私有地内デモカーとして使用されていた経歴があると伺っていました。平均より随分早いクラッチの不調は、ご購入前の使用状況が原因しているように思います。それは2年前当時、すでにクラッチのミートポイントの高さを感じていたからです。
お客様は、圧着力の高い強化品への換装もお考えのようでしたが、クラッチ油圧系や、クラッチペダル可動部への負担を考え、一般使用には純正がバランスがよいとご提案差し上げました。
↓例えば、強化クラッチにありがちな発進時のジャダーを抑制しつつ圧着力を確保すると、このような高価な品物になります。
今回は整備要領書を読みながら作業を進めました。まずは縦置きのトランスミッションの離脱を行います。縦置きですがシフトレバー周りの内装を取り外さなくてよい親切設計です。小さなクリップ一つを外すだけでコントロールロッドとシフトレバーを分離できます。
センタートンネルに配置されているトランスミッションの下にはセンターマフラーが通っていますので、マフラーも離脱。そして、作業の妨げになりそうなフロントスタビライザーをブラケットごと取り外してスペースに余裕を持たせます。
車両下で作業しているとまるでスバルの自動車を整備しているようです。それほどトヨタの構造が見当たりません。エンジンやミッションを後方・下方にレイアウトしているスポーツカーらしい配置ですが、作業の妨げになるような狭小な場所は全くなく、非常に順調にボルト・ナットにアプローチできます。その作業性の良さは、かつてのハチロクを思い出しました。
旧ハチロクは一人で軽く担げるトランスミッションでしたが、現行のハチロクは保持具の力を借ります。
そして取り出したクラッチディスクは摩耗限界に達していました。スリットはほとんど消えていて、リベットがフライホイールに触れる寸前。予兆をお感じになられてすぐにご相談いただいたのが良かったと思います。
パイロットベアリングも同時に交換。
こちらのクラッチは、フライホイールとクラッチカバーの重量相殺をして組み付ける指示がありました。アンバランスマークは120度以上ずらして組み付けます。
以前から不調を伺っていたクラッチ操作時の異音は、レリーズベアリングの摺動部でした。負担の掛かる操作をされたとき高温環境にさらされたのでしょうか、グリースはすっかり乾燥していました。
綺麗に清掃して新品のベアリングを組みます。
あとは逆の手順でトランスミッションを搭載して作業は完了です。クラッチのミートポイントが適正になり快適に操作できるクラッチが復活しました。数少ない純国産スポーツカーです。快適なドライブをお楽しみください。
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