輸入車整備士のご友人がいらっしゃるお客様が、「軽自動車の整備は狭くて難しいらしいですね。先日友人が、イレギュラーな仕事で、スズキのKeiのタイミングベルト交換をして大変苦労したと言ってました。」とお話しされました。その直後、僕は同型車のタイミングベルト交換作業を承ったのです。
平成12年式 GF-HP11S F6Aターボ 4WD 走行距離 85,000km
同じエンジンが搭載されたワゴンRで何度か作業したことがあるのですが、Kei(ラピュタ)は何か特別なのでしょうか。
HP11Sのタイミングベルト交換の標準作業時間は4時間以上。付随作業のウォーターポンプやオイルシール交換を含めると5時間を超過します。これは平均的な軽自動車の同一作業の約2倍です。
作業スペース確保のため、フロントバンパーを離脱し、エアコンコンプレッサーを配管接続のまま邪魔にならない場所に移設します。
ターボチャージャーの吸気パイプ奥側の6mmのボルトがアプローチ困難です。標準作業はこのボルトの取り外しのためにターボチャージャーを移設する作業が含まれるのかもしれません。ターボ移設をするならば大変な作業だと思います。年式的に排気周りの劣化が進み、簡単には取れないボルト・ナットも多いでしょう。
僕は角度・長さ違いの汎用レンチ2本を用意し、ターボを取り外すことなく6mmのボルトを少しずつ回しながら取り外しました。ボルトは他の部品に干渉して抜けませんので、パイプと共に取り外します。
エンジンマウントその他、離脱する部品点数は多いように感じますが、他に難所は無く、部品を外していくと十分な作業スペースが現れますので、オイルシール交換も手鏡は使わずに直接目視で確実な挿入が可能でした。
ウォーターポンプのガスケットは、ほとんど見かけなくなった紙製で、シリンダブロックに強固に癒着しています。
位置決めのスタッドボルトはウォーターポンプ取付には便利ですが、ガスケット剥離には妨げになりますので、汎用のリムーバーで一旦取り外して、接合面を綺麗に清掃します。
水冷式のターボチャージャーと同方式オイルクーラーの備わる、F6Aエンジンはクーラント管理がとても重要です。シリンダブロックの内部には若干の腐食痕が見られましたが、手遅れではありませんので、今回からクーラント交換を適切に行いましょう。
自作したクランクシャフト回り止め特殊工具(SST)です。アイシン製のウォーターポンプフランジの一部を切り取って加工したものです。
ドライブプレートの2山(白いペイントをした部分)とミッションハウジングの凹に合うようにしました。
これがあると容易に規定トルクでクランクプーリーボルトを締められます。メーカーが用意した特殊工具がありますが、こちらのエンジンにはとても使いにくく、自作を選びました。
最後にウォーターポンププーリーは4穴のものが供給されました。何かの対策なのかもしれませんので従うことにしました。
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