カテゴリ: ダイハツ

ダイハツ タント 加速不良(CBA-L350S EF-VE(VVT) タイミングベルト交換後)

タイミングベルト交換作業の後、まるでベルトが1歯ズレたように加速が鈍くなったダイハツ タント。作業過程に思い当たる節がありました。

平成18年式 CBA-L350S EF-VE 4AT 走行距離 100,000km


ちょうど走行距離10万キロを迎え、タイミングベルト交換作業をご依頼いただきました。バルブカバーにエンジンオイルのにじみが見られましたので、エンジンのクランクシャフトやカムシャフトに備わるオイルシールも予防的に交換しようと思いました。

オイルシールは、カムシャフト先端に付くタイミングプーリー奥にあります。ところが、プーリーを固定する17mmのボルトがとても固く、規定トルクは100Nmとそう高くないのですが、ボルト山に塗られた緩み止め(嫌気性接着剤)の固着が作業進行を阻みました。回り止め工具の細いピン2本は支えが頼りなく、渾身の力を込めたブレーカーバーのトルクに負けてピンに変形が生じるほどでした。

カムシャフトの奥に備わるVVTユニット(油圧式可変バルブタイミング機構)への影響が心配でしたが、強力なエアインパクトの力に頼りました。

古いタイミングベルトを掛けたままテンションを強めに張り、数回の打撃。しかし、緩む気配がないので、カムシャフトオイルシール(現時点ではオイル滲みなし)の交換は無理せず見送り、タイミングベルト交換作業を完了したのですが、アイドリング回転が若干低く、走り出すと顕著な加速不調に陥ったのです。

試運転開始からしばらく後、2トリップのエンジン警告灯が点灯し、手元の診断機の表示は見るまでもなく「VVT(可変バルブタイミング機構)」のフォルトでした。

バルブカバーを開けると、タイミングベルトのマークはぴったりなのに、カムシャフトのギアが一山遅れています。

回り止め工具のピンが大きく変形してようやく外れたカムプーリーです。

VVTが備わる排気側カムシャフトを取り外し、

VVTを取り外すと、位置決めのピンが脱落して斜めになった状態でした。VVTとカムシャフトがズレた方向は、VVTの大きなロックナット(逆ネジ)が緩む方向です。よくこれ以上回らなかったと、被害が最小だったことに胸をなでおろしました。

位置決めピンが挿入されるカムシャフト側の穴の周りは、浅く挿入されたピンに横方向の力が掛かって剥離したように見えます。写真に向かって穴の左側はピン側面に押されて綺麗な表面ですが、右側は梨肌です。金属片らしきものは周辺にはなく、傷も見た限りはありませんでした。

そして、脱落したピンをカムシャフト奥まで圧入すると、ピンの頭はわずかしか出っ張らず、

VVTのボス部に設けられた凹みに少し掛かる程度です。

カムシャフトのピン穴の形状、ピンの全長、そのどちらも不可解な印象が拭えませんでした。お渡し後に大きなトラブルにならず本当に良かったと思います。Web上でも同様の事例がいくつか掲載されていました。

インパクトレンチ使用の作業は、悪影響の無い範囲に留めたつもりだったのでとても落胆しましたが、加えた打撃が原因(きっかけ)であることは確かでした。翌朝、リサイクルパーツを求めて、いつもお世話になっているNKオートさんにコンタクトします。

NKさん:「はい、NKでーす!」

たけし:「たけしです。いつもありがとうございます! NKさん、タントのEF-VEのVVT、お持ちでないですか?」

NKさん:「まいどっ!それ何年式のタント?」

たけし:「18年式です。」

NKさん:「後期やな。た・し・か・こないだ外したで… 探してみまーす!待ってて。9時くらいになると思います。」

たけし「ホンマですか!助かります!」

まるで今回のトラブルを予想していたかのようなNKさんのご対応に心より感謝します。エンジン全体をそのまま販売することと比べて、VVTなど単品を、時間を掛けて取り外すことは割に合わないからです。日々更新されるNKさんの頭脳(データベース)には、多くの修理屋が求める部品のリストがいつも豊富です。

手元に届いたVVT。味わい深いNKさんの直筆が記されています。

組み込むと、ギアのマークは水平で対向する位置にきれいに収まりました。

新品のカムプーリーボルトには、たっぷりと嫌気性接着剤が塗られています。再使用は不可。

特殊工具でタイミングベルトを張り、軽快なEFエンジンが蘇りました。

Published by
ITS