『助手席側のパワーウインドウを操作すると、ガラス窓が斜めになって止まるので、慌てて手でガラスをサポートして元の位置まで戻しました。』というアルファロメオ147にお乗りのオーナー様。
無理に操作すると、レギュレーターと言われる昇降装置の一部が破損し、全く窓ガラスが動かなくなることがありますから、日常的な覚悟と適正な対処が被害を最小に抑えたようです。
平成20年式 ABA-937BXB TwinSpark 1.6L 5MT 走行距離 49,000km
運転席側もパワーウインドウ操作時に異音がするということで、スイッチに触れず入庫いただきました。
現状を確認します。
ドアトリム(内張り)を外すと、発泡ポリスチレンシート(polystyrene paper、PSP)が接着剤で固定されています。PSPはデリケートですから接着部をカッターナイフ等で慎重に剥がしていきますが、どうも今回の作業は2回目のようで、前作業の痕跡がありました。
車齢10年と少し、走行距離5万キロ未満でパワーウインドウが2回故障したとすれば、あまりに脆弱。
一部の輸入車オーナー様は、パワーウインドウ部品は定期交換とまで仰います。
多くの国産車のように、金属板をパンタグラフ状にした堅牢なレギュレーターならほとんど故障しないのですが、こちらのように小さな樹脂部品一つで重いウインドウガラスを昇降させるワイヤー式は、見るからに頼りなさそうです。
今回の不調は、上下する樹脂部品の一部の破損が原因でした。
たったこれだけの損傷で、正規の修理はモーターを含むレギュレーターASSYの交換になり、価格も相応です。純正部品の頼りなさをお話ししてオーナー様と相談した結果、今回は社外品のレギュレーターを宛がうことにしました。部品価格は純正の1/3以下です。
問題のあった樹脂パーツの形状が少し工夫されているように見えますので、より耐久してくれることに期待しましょう。
一方で、僕は樹脂パーツのみの交換修理を検討しました。
画像の上側が東欧の業者から取り寄せた樹脂パーツです。ebayなどで世界を検索すると、いくつか該当の部品が販売されています。なかでも仕上がりが良さそうなものを手配しました。
サイズ、材質ともに問題ないようです。ドアガラスが一番下になった時の緩衝ゴムの取り付け場所も作りこまれています。
さて、一見単純な構造のワイヤー式のレギュレーター。分解組み立ては慣れるまで容易ではありませんでした。
モーターリールに均一に巻かれたワイヤーは、テンションを緩めると一気にバラバラと解けます。
とても2本の手では手に負えず、アングルに爪を溶接した治具を製作し、各部固定した状態で新しい樹脂パーツを慎重に組みます。無理に組み込もうとすれば、せっかくの補修部品を損傷させかねません。
今回はモーターもワイヤーも再使用が可能でしたので、無事にリビルトASSYを完成させることができました。尚、東欧の業者にはワイヤーの補修パーツの用意もあるようです。
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