日本国内でヒットセールスだったアルファロメオ156は、イタリア本国仕様の車高よりも低い仕立てで日本に正規輸入されていました。
イタリア本国ではいたって凡庸なセダンに、インポーターが、低いフォルムと敏感すぎるハンドリングを与えた理由は、異国のセダンにスポーツ色のイメージを持たせたかったからかもしれません。
バンプ側(縮み側)に余裕のないローダウンされたサスペンションは、少々強めの入力で簡単に底突きしてしまいます。特にカーブ途中の外側輪などは、もうほとんど縮み切っているので、路面の凸部を通過するとサスペンションが底を突いて動かなくなり、コントロールを失って大変怖い思いをします。
だから、そうならない程々の速度でしか走れない、本当の「スポーツ」とは言えない仕様なのです。
約5年前、本当のスポーツ走行をご存じのお客様は、ご自身の156の足回りに違和感をお感じになり、僕は、特別に調達したイタリア本国仕様のコイルスプリングと、世界一流のショックアブソーバーKYBの組み合わせで本来の『中庸』なセダンの足回りをご提供しました。
イタリア本国仕様の確からしさ(アルファ156 selespeed 932A2 本国仕様コイルスプリング装着)
平成13年式 アルファ156 GF-932A2 2.0TS selespeed 走行距離 138,000km
今回は、痛みの発生したフロントロワーアームの交換です。ブレーキを踏むと前輪が数センチ後退するほどガタつきが大きく、直進状態でステアリング中央付近の手応えが極めて曖昧になります。
純正と同等でリーズナブルなTRW製サスペンションアームを入手しました。
取り外したサスペンションアームは、後ろ側のラバーブッシュが中心軸から脱離して、クルクルと簡単に回転する状態まで傷んでいました。
フロントは複雑でスペースに余裕のないダブルウィッシュボーン構成ですが、知恵の輪的にロワーアームが交換できます。
そして、新品のロワーアームを組み付けて各部微調整し、車両前方から接地状態でアームの取り付けを見ますと、きっちりと水平になっていることがわかると思います。
ロワーアームの車両側のブッシュは角度が固定の構造ですから、このようにアームが水平になってバンプ側もリバウンド側もブッシュの捻じれが均等に働きます。
ローダウン仕様は、接地状態でバンプ側にブッシュが捻じれた状態になりますから、標準車高よりストレスが掛かるのは明らかです。ラバーブッシュの捻じれの不均衡がサスペンション作動にも、ブッシュの寿命にも良い作用をしているとは思えません。
こちらの156は、他所でロワーアームを一度交換されていたようですので、今回のロワーアームブッシュの脱離は、本国仕様のサスペンションにした10万キロ走行以前のストレスの蓄積が、今に症状となって表れたのかもしれません。
アルファ156らしい、普通で快適なハンドリングが蘇りました。楽しいドライブをお楽しみください。
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