最近、発進するときに前方からコンコン…と音がするようになり、徐々に音が大きくなってきたようで心配なので診て欲しい。とのことで、入庫したのは
平成15年式 トヨタ ヴィッツ UA-SCP10 1SZ-FE 5MT 走行距離67,000km。
ヴィッツのマニュアル車は珍しいですね。
症状を確認します。ゼロ発進のときだけ、確かにコンコン…と音が鳴ります。たまに2速にシフトアップしたときも「コンッ」と音が鳴ります。
お客様は、トヨタのディーラーに何度も足を運び、2人のメカニックに診てもらったそうですが、決定的なことはわからず、車を何日も預かるのは難しいとのことで体よく断られたそうです。その販売店で購入した車なのにひどい話ですね。
マニュアル車だからか「激しい運転なさってますか?」とかわけのわからない問診を繰り返され、何だか相談する気がなくなったらしいです。
ユーザーによって運転の方法は千差万別。ディーラーでは、トランスミッション内部の異音とか、ブレーキパッドの遊びの音だとか、サスペンションのブッシュのへたりだとか言われたらしいですが、僕が音を聞く限りはどれも当てはまらないと思いました。
試乗を繰り返すと、エンジンが後方に大きく動いたときに音が鳴ることがわかってきました。だから発進時に音が最も大きくなるのです。
当然バックではエンジンの傾きが逆になるので鳴りません。リフトアップして、怪しそうなエンジンマウントを確認します。目だった劣化はありません。しかし、必ずエンジンが後方に倒れ込むときに音がするのです。
と、エキマニとフロントパイプの継ぎ目に注目しました。近頃は、オイレスリングという名前のドーム状ガスケットが主流です。ボルトにはスプリングが巻かれ、フレキシブルに動くとものです。
ボルトは一定以上締まらない構造なので、繰り返し力が掛かってガスケットが潰れていくと「遊び」ができそうです。外してみますと、随分当たり面が凹んでいます。スプリング当たり面にも擦過傷が見られます。
まずコレに間違いないだろうということで、新品を組み付けて試運転。異音は解消しました!
長い期間気になっていた異音の原因がわかり、また、とても安くしてもらえたとお客様には喜んでいただきました。しかし、こんなところからあんな大きな異音が発生するなんて…
とても勉強になりました。