年末年始にかけて、冷却系統修理のBMWが2台続けて入庫しました。
そのうちの1台、E46 318iはプレッシャーキャップの圧力が200kPaという、とても高圧なものが装着されていて、これは多くの国産車の108kPaの約2倍の設定圧力です。そして、同車サーモスタットハウジングに印字されている105℃の文字は、常気圧では水が沸騰する開弁温度です(国産車のサーモスタットの開弁温度は概ね80度~90度)。
国産車並みの加圧の場合、冷却水の沸点は(クーラント濃度にもよりますが)約120℃。E46の水路加圧を倍にして得られる沸点上昇は約15℃です。エンジン稼動温度を上げたい理由はいくつか想像できますが、市販量産車エンジンとしての設定値の高さに驚きます。
修理完了して試運転でデータモニターすると、サーモスタットハウジングの水温センサー指示値は、真冬の京都でもすぐに100℃を超え、すぐ近くのラジエータ出口の水温センサーは、外気温近くから100℃超まで、めまぐるしく変化します。連動してエンジンオイルの温度も市街地走行で軽く100℃を超えますから、良質の100%化学合成油を使用しない選択はありません。
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BMWの複雑な水路にはポリアミド66の樹脂パーツが多用されていますが、温度差、圧力差で膨張収縮する各部品の疲労はどうでしょうか?経年変化で弱った水路の一部が予兆なく一気に破裂することが多い理由の一つかもしれませんね。
BMWの取り扱い説明にはクーラント交換不要の旨、記載がありますが、これだけ過酷な状況で使用されているクーラントを交換しないのは心配です。酸化したクーラントは樹脂パーツを非常に脆くしますから、定期交換で水路のパーツを長持ちさせる効果が期待できると思います。
↓走行距離17万キロ超まで故障のなかったE87の電動ウォーターポンプは、ターボ過給器のような構造です。
↓電動ポンプが備わる水路のエア抜きは外部診断機で強制的にポンプを駆動します。
高速道路や山坂道といった、止まることなく走り続けられる場面では、クーラント温度は経路全体で温度が安定します。高速巡航の使用環境で故障が少ない多走行車がある理由でしょう。
試運転でいつも感じる、妥協のない上質でなめらかなBMWのフィーリング。
エンジン設計の思想を始め、他メーカーには見られない独創性がBMWの最大の魅力です。毎日毎日BMWのことを理解しようと努力し、愛情を注ぎつづけることが、特別な愛馬サラブレッドを平均以上に延命させる唯一の方法なのかもしれません。
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