エンジンオイル定期交換は大切だとご存知の方でも、クーラント(エンジン冷却水)交換は意識されないことがほとんどです。
第一に交換頻度が低いことがその理由です。かつて2年毎(車検毎)に交換されていたクーラントは、現在では7年毎や11年毎と超ロングライフになっていて、自動車整備に直接携わることの無い一般の方には縁遠い存在なのかもしれません。
さて、冒頭の写真はクーラント管理が不適切だったワゴンRの水路の一部です。
平成11年式 GF-MC11S F6Aターボ 4AT 走行距離 151,000km
スチール製のジョイントはゴムホースとの接触面が錆びて膨張し、密閉性が損なわれてクーラントリークが始まりました。
このようにクーラントが適切に交換されていないと、防錆機能が満たされず、著しい腐食を生じます。
外観では分かりにくい別の場所のジョイント部分です。
こちらもホースを離脱するとこのような腐食。
全ての水路がこのような状態で、それはホースやパイプだけでなく、エンジン内部も侵食しています。そして、クーラントは室内暖房にも関わる部位ですから、腐食で生じた異物が水路を浮遊してヒーターコアを詰まらせますので、暖房の効きが悪くなるなどは、もう手遅れの場合が少なくありません。
一方、適切に交換管理がされている車両の水路のジョイントは離脱しても腐食は全くと言っていいほどありません。
ハイゼットトラック(S100P)LLC管理のお手本
徹底したクーラント管理で腐食皆無の水路を(ダイハツ ネイキッド L750S)
それはクーラントに配合されている防錆剤の効果が十分あるからです。クーラントの劣化は防錆効果の低下が先に訪れます。主成分の不凍性能を司るエチレングリコールはそう簡単に劣化しないといわれます。
エンジンオイルの交換時期が走行距離や使用期間で管理されているのと同様、クーラントも走行距離や使用期間で交換時期を判断する方が良いと考えています。
僕は、概ね年間3万キロ以上走行される方には1年毎の交換(超ロングライフクーラントの場合は2年)をお勧めしています。そして水冷式のターボチャージャーが搭載されるエンジンについては係数が掛かります。感覚的に、クーラントに伝わった熱の積算を目安にしていて、クーラントの微妙な臭いの変化も交換時期を決定する重要な要素です。
《関連記事》
徹底したクーラント交換で腐食皆無の水路を(ダイハツ ネイキッド GH-L750S 車検整備)
クーラント管理を怠ると… (ダイハツ ハイゼットバン V-S100V)
ロングライフクーラント(LLC)の寿命と防錆性能
ダイハツ ハイゼットトラック オーバーヒート(M-S82P)
フレンズ says
クーラント管理の必要性を問いかける良い症例ですね。
特に鋳鉄ブロックのF6Aターボはクーラント管理がエンジン寿命を
左右するといっても過言ではありませんよね。
ここまでジョイントの腐蝕が進行してしまうとホースも膨張して、
ジョイントパイプの交換だけでは済まない場合もありますしね・・
たけし says
フレンズさん、ありがとうございます。
今回の事例では金属の腐食膨張がホース内部の補強繊維層まで及んでいて、ホース端面の繊維からもクーラントが滲んでいました。
格安短時間車検では、まず交換されないクーラント。クーラント交換を手順に従って作業すると相応の時間を要しますよね。
某メーカーで樹脂製のジョイント破損が問題になったのか、対策品として無償交換された金属製のホースジョイント。
樹脂(PA66+グラファイト)は、腐食はしませんが、劣化したクーラントに長時間晒されると脆くなり、内圧に耐えられず破裂します。内部浸食を確認した例もありました。
仮にクーラント管理が悪くても、金属ジョイントなら急な破裂は防げるというメーカーの判断だったのでしょうか。
欧州車では多用される傾向にある樹脂製のクーラント経路。複雑な形状を安価に製造できる利点は魅力的なのかもしれません。そしてメーカーの目論む自動車代替サイクルでは、問題が表面化しないのでしょう。