「以前からアイドリング状態でエンジン振動が大きく、時々信号待ちなどでエンストすることもあったが、再始動が容易だったので特に気にしていなかった。ところが、今朝、始動して少し走って停車したところ、同時にエンストして再始動が不能になった。」と、スズキ エブリィがレッカー搬送されてきました。
平成15年式 LE-DA62V K6A 3AT 走行距離 98,000km
アイドル回転が不調なため、特に冷機の不安定なときに燃料過多になった様子です。搬送されてきたときにはエンジン始動が可能になっていました。しかし、クーラント温度が低い時の、いわゆるファーストアイドル回転が低く、エアコンONでもアイドル回転上昇が不足しています。
ISCV(Idle Speed Control Valve)という吸入空気弁があります。内部のステッパーモータは、エンジンコントローラからの指令で動作し、吸入空気のバイパス通路に配置されたISCV先端の弁を動かして、アイドリング回転の制御を行います。アイドリング回転が低いだけでISCV単体動作は良好なようですから、まずは吸気経路の清掃を試みましょう。スロットルボデーの下脇にISCVは装着されています。
弁になる先端部分はカーボンが堆積していました。
クリーナーを使って弁の接触面だけ丁寧に拭き取ります。クリーナーを直接大量に吹き付けたり、ISCVを取り外さずにバイパスポートから吸入させたりすると、ISCV内部のコイルの絶縁被覆を破壊してショート気味となり、エンジン制御コンピュータのISCV出力段のパワー素子にまで破損が及ぶ例があります。
まず、このISCV清掃では、不調改善はわずかでした。次にメインのスロットルポートを見ると、ISCV以上のカーボンの堆積が見られます。
黄金色にみえるスロットルバタフライのエンジン側(内側)には気密性の確保のためか、モリブデンペーストが塗布されているエンジンがあります。強力に洗浄をしてしまうとカーボンとともにペーストまではがれてしまって気密性が損なわれ、逆にアイドリングが高いままになってしまう例があります。
指にクリーナーを少量つけて、ポート壁を優しく清掃するのが無難でしょう。スロットルポートの清掃を終えると、調子のよいアイドリングとアイドルアップが戻りました。
吸気系の汚れは、燃料の質やエンジンオイル管理の不徹底と強い相関があると感じています。ユーザーが良いものを選択するのが困難なガソリンの質は、良質の添加剤で補うと良いのかもしれません。
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