前回記事『上がらないパワーウインドウの修理(プジョー307CC)』の続きです。
パワーウインド作動不能に陥ったプジョー307CC。内部のレギュレータはワイヤーケーブルがモーターリールにぐちゃぐちゃに絡んで、あちこちのプラスチック部品に亀裂や損傷が見られました。
通常、「パワーウインドレギュレータ」という、ドアガラスを上下させる機構部全体(場合によってはモーターも含む)を取り替えることで修理しますが、海外ではリペアキットという部分修理ができる安価な部品が販売されています。
今回、お客様のご協力を得てリペアキットの検証を行いました。
複雑な釣瓶式レギュレータを分解してリペアキットを組み付け、一時は円滑に動作するようになったのですが、ガラスの建付け調整をしていると、鋭い礫音と共に再度動作不良に陥ります。
誠に不本意ながら、新品の純正レギュレータを取り寄せ、しばらくぶりに円滑に動作する運転席パワーウインド機構が戻りました。
パワーウインドモーターの奥に
このようなプラスチックのリールが内蔵されていて、ステンレスワイヤーが巻かれています。
リール比較です。青が純正、白がリペアキットに内包されていた品物。
サイズや形状は同じように見えますが、高さが僅かに違います。この違いが影響したのでしょうか?
ドアガラスが上下動作双方の端に達するとき、過電流リミットまでモーターには駆動力がありますから、僅かなサイズ違いの影響でリール格納部で力が逃げ、軸がズレる可能性があります。
以前の206CCリアクオータウインドの修理のときは、リールの形状の違いを懸念して、再利用できる部品は極力再利用しました。今回はリールの損傷が激しかったのでリペアキットのものを使いましたが、これが良くなかったのかもしれません。
いずれにしても良否が不明のリペアキットを使用するのはとても勇気が要ります。リペアキット使用は、パワーウインド機構が完全に壊れる前の予防措置として部分的に使用するのが良さそうな印象です。
今回、何度もドア内張り内部の部品を分解組み立てしましたので、着脱可能にしたインナーハンドルの取り付け部の改変は正解でした。
お客様には長期間お待ちいただき、またいろいろとご理解いただきましたことを厚くお礼申し上げます。同種の修理に対して有意義な知見を多く得ることができました。