「ボンネットから突然白煙が出て、とりあえず出先の駐車場で停めました。」とメールで第一報が入りました。
平成16年式 BMW E46 318iツーリング 走行距離83,000km
半ば冗談交じりに「古い輸入車に乗るなら、たけしくんの半径数キロ以内の移動に限りますね。」とお話されていたオーナー様の笑顔を思い浮かべながら、まさに僕の半径数キロ圏内にある停車先に向かいました。
現場に到着すると、同じ優しい笑顔で迎えてくださるオーナー様。
早速ボンネットを開けて、辺りに噴出して乾燥したクーラントを確認。白煙のように見えたのは蒸気でした。
液面を示す「浮き」が下がったエキスパンションタンクに注水すると、勢いよく漏れ出した場所はシリンダヘッド脇のバイパスホースジョイントでした。樹脂でできたジョイントは指の力で軽く壊れるくらいに脆く劣化していて、内圧で一気に破断した様子です。
エチレンプロピレン(EPDM)のラバーホースと、ポリアミド66+グラファイト30%添加(PA66-GF30)の樹脂製ジョイントがアセンブルされたクーラントホースは、BMWの特徴のひとつ。旧来のホースバンドやクリップで締結する形式と異なり、組み付けが格段に容易です。BMWの水路は、ほとんどがこの方式を採用していています。
↓取り寄せた新品のホースジョイントアセンブリ。
ジョイントの素材、射出成型のポリアミド66は、複雑な形状が低コストで量産できるので、狭いエンジンルームに配置する水路形成に都合がよいといえます。そして、ラバーホースとジョイントをアセンブルして供給を受けることで、組立コストはサプライヤ側の負担になり、最終組み立てコストも低減されるでしょう。
↓水冷式オイルクーラーへ至る配管
↓大きな亀裂が走ったことのあるエキスパンションタンク周りも
多少の劣化の差異はあっても同じクーラントが循環していますから、一箇所の劣化は全てを反映します。だからと言って、複雑に配置される全ての水路部品を交換した場合、その費用は「駆け抜ける歓び」と釣り合いが取れるのでしょうか?
愛着が暴走しそうなアンバランス感が拭えません。
ささやかな愛情と手間を継続して掛け続ければ、半永久的に個体を存続できる質実剛健の美学を、今一度、現代の工業製品にも感じたい。自動車のように愛情を注げる対象は、そうあってほしいと僕は願います。
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