前回記事『セレスピートの不調 その4(アルファ156GTAワゴン GH-932BXB)』の続きです。
(このシルバーのエンブレムはオーナー様作です。素晴らしいですね!)。
本日でお預かり1週間になりました。診断に費やした時間は通算で20時間を超えています。自動車の修理にかかる技術料は一般的に費やした時間で決まりますから、原因がつかめないと非常に大きな損失です。
手探りで点検やデータ取りを行っていますが、資料が乏しく、また症状が出にくいことも原因に辿りつき難い理由の一つで、虚しく時間ばかりが経過します。
平成16年式 GH-932BXB V6 3.2 Selespeed 走行距離 100,000km
セレスピードは、運転者の代わりにマニュアルトランスミッションの操作をするロボット変速機です。クラッチの断続操作もその機構に含まれますから一般的なオートマチックと同じ2ペダル。不調時の症状は、アイドリングで停車中、ガタガタと車体が震えた後、ガツンと衝撃が加わりエンストするというもの。クラッチを切っておかないといけないときに、誤作動してクラッチを接続してしまうようです。
データ取りはいつも深夜。
しかしなかなか症状が出ません。気が付いたことはニュートラルでもギアシフトした状態でも停車時はクラッチを切っているということ。クラッチ動作を司るソレノイドバルブに1000mA程度の電流が流れ続けます。
走行中は変速のたびにクラッチを繋ぎますので、ソレノイドバルブへの通電は絶たれます。
渋滞や暑いときに症状が頻発すると伺っています。停車時間が長いとソレノイドに電流が流れ続けますから、クラッチ動作制御系のどこかに負担が掛かりそうです。路肩にアイドリング停車してデータモニターすることにしました。
そして30分ほど経過したとき、「ガタガタ…」っと車体が揺れはじめました!
ところがその瞬間、ラップトップのバッテリー容量が底を尽き、肝心のデータが取れずじまい… 明日は工場内でパソコンの電源が絶たれないようにしてデータを取ることにしましょう。目視でもおかしい場所はないかを点検します。セレユニットはバッテリーの下に配置してあります。
クラッチソレノイドだけ新しいものが付いていました(コネクタを離脱している一番上)。ソレノイド単体での供給はありませんから、おそらく中古車としてご購入された以前にも同様の症状があって、他のセレユニットから移植したのではないでしょうか?その他にも分解した形跡があちこちにありました。
コネクタの内部やソレノイドへの導通は問題なし。断線してそうな部分も見る限りはありません。
クラッチソレノイドに通電し続けると時々不調になり、エンジンルーム温度や外気温(本日は19度でした)にはあまり関係なさそうとなると、コントロールユニット内のソレノイド動作にかかわる出力デバイスに問題がありそうな雰囲気がします。その判断には、不調時のソレノイド電流のデータ捕捉が第一です。
次回『セレスピートの不調 その6(アルファ156GTAワゴン GH-932BXB)』に続く