世界で一番オートマチックトランスミッション(以下、オートマ)の普及率が高いのは、日本だそうです。一方、欧州では全く正反対でマニュアルトランスミッション(以下、マニュアル)が主流です。
現在、無段変速機(CVT)や、それに付随するきめ細かい電子制御などの技術向上で、燃費、耐久性とも、マニュアル以上の性能になったオートマですが、普及が急速に進みはじめた1980年代後半は、運転操作が簡便になる以外にほとんど利点はなかったように思います(価格、燃費、車両重量、信頼性など)。多くの消費者は当時、オートマの欠点をかなりの程度認識していたはずです。
そして気がつけば、もう新車で探すのが困難になるほど特殊扱いのマニュアル。場合によってはそれを求めたり、所有する人まで特殊扱いでしょう。
さて、自動車は「自動」といっても、基本的には運転者がオペレートする大変危険な乗り物です。メーカーの本当の意図はわかりませんが、近年、完全自動運転を宣伝するものをよく目にするようになりました。熟練した人間の感覚をもって初めて一定の安全を確保できる自動車の操作を、全て機械任せにすることにあなたは違和感を感じませんか?絶対大丈夫と言われて、完全自動制御の無人飛行機に乗れますか?
今はすっかり慣れましたが、オートマのクリープ現象を初めて体感したとき違和感を感じたものです。それは自分の意志と無関係に自動車が動いたからです。
衝突未然防止機構、誤操作防止機構、居眠り運転察知機能… どれも危険な場面で設計どおりに機能すれば大きな事故を防げます。そして個々の技術は大変すばらしいものだと思います。しかし、それらは『偽善』であってはいけないのです。
以下、文献引用:「メルセデス・ベンツに乗るということ」赤地学、金谷年展
「本当の安全性とは?」「環境と共存していくには?」「人間本位の社会をデザインする企業とは?」そして「消費者が本当に望んでいることは?」
「子供が望むからと言って何でも欲しいものを与えるのが正しいのか。あらゆる企業がカスタマー・ファーストという言葉を使い、ユーザーが求める飴やチョコレートを与えている。しかし健康によい歯ブラシや野菜を同時に与えてこそ、本当に子供を育てることでありユーザーのためになる。このように何がファーストなのかというコンセプトが今求められている。」