カテゴリ: アルファロメオ

蘇ったアルファサウンド ~アルファスパイダー (E-916S2B) フェーズバリエータソレノイド交換~

僕:「なんか… 一味足りませんよね…」

お客さま:「そうでしょ! そうですよね! ツインスパークって、もっと元気がいいというか…」

特に不調というわけではなく、エンジンは円滑に回転上昇するし、アイドリングの不安定さもありません。でも僕は、明らかにアルファロメオの音ではないと感じました。先日足回りの整備で入庫した黄色のスパイダーはもっとスポーツカーらしかったのです。お客様は最近中古車でご購入され、思い描いていたものと違うアルファロメオに釈然としないご様子でした。

平成11年式 E-916S2B 2.0TS 5MT 走行距離 39,000km


試運転を繰り返します。4000rpm以上の高回転域では元気よく回るのですが、2000~3000rpmあたりが、一言でいうと「もっさり」回るのです。このスパイスの抜けた感覚が全くアルファらしくありません。比較する対象がない場合、「こんなもの」で片付けられそうな微妙なフィーリングです。一体何が原因なのでしょう。

バルブタイミングが狂っていれば、全回転域でおかしいはず。しかし、何となくバルタイずれのような感触があります。ちなみに関係のありそうな故障履歴はECUに残っていませんでした。

さらに調べますと、こちらフェーズバリエータという吸気カムシャフトのバルブタイミング可変機構が備わるエンジンのようです。油圧で制御されている機構で、国産車でもオイルコントロールバルブ不調は珍しくありません。点検する価値はありそうです。

引き続きラジエータ修理で入庫中の同型の黄スパイダー(平成11年式 E-916S2B)にお乗りのお客様にお願いし、乗り比べ、及び、部品の交換チェックの承諾をいただきました。

乗り比べると違いがよくわかります。こちらが気になるオイルコントロールバルブです。

僕が手にしているのは、黄スパイダーから取り外したものです。随分形状が違います。走行距離が10万キロ近くですので、過去に交換歴があるのかもしれません。交換前に作動を確認。

エンジン始動すると一瞬先端が飛び出てすぐに引っ込みました。そして、元付いていたものを同様に作動点検

エンジン始動しても先端はまったく反応がありません。エンジン回転だけでなく、負荷によってもプランジャーの出方はコントロールされているのでしょうが、全く反応がないのは明らかに異常でしょう。

そして、黄スパイダーのバルブを青スパイダーに組み付けて試運転しますと…

まるで違います!!あんなにもっさかった回転がウソのように気持ちよく吹け上がるのです。さらに、2000~3000rpmという比較的低い回転域でも、心地いい排気音が座席下から響きます。

では、逆に青スパイダーのバルブを黄スパイダーに取り付け試運転しましょう。すると、エンジンが入れ替わったかのようなもっさり感に…

こんな小さな油圧制御部品で、こんなに音が違うなんて驚きでした。アルファロメオには音響部門があるとかいう噂を聞きますが、本当かもしれませんね。

新品部品はプランジャーとセットで供給。大変高価な部品です。今回は交換チェックの車両をご提供いただき迅速な診断ができました。この場をお借りして黄スパイダーのオーナー様にお礼申し上げます。

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