アルファロメオ156です。
『クラッチペダルが完全に戻らないときが時々あり、最近はその症状が頻繁になってきた。クラッチが完全に切れないわけではないがフィーリングが悪いので診て欲しい。』
と修理のご用命を承りました。
平成11年式 E-932A1 6MT 走行距離 116,000km
まずはクラッチの油圧系統を点検。レリーズシリンダにクラッチフルードの漏洩、マスターシリンダにも微弱なフルード漏洩が確認できましたので交換することにいたします。
アルファロメオのレリーズシリンダはスレーブシリンダという名称。「マスター」と「スレーブ」は対義語ですね。こちらの方が自然な呼称だと思います。ちなみに「レリーズ」は「release」が訛って業界用語となったものです。
レリーズシリンダはバッテリー下のミッションケース上部に配置されています。
内部には錆が発生。
レリーズシリンダの交換は比較的簡単です。
マスターシリンダの交換は難易度が変わります。シリンダは室内側、足元奥に配置されていて容易にアプローチできません。
アクセルリンクや、ステアリングロッドその他に阻まれて、交換は困難を極め、写真を撮る余裕がありませんでした。
新旧比較です。
内部には錆が発生し、微弱な液漏れが確認できました。
さて、作業の困難さはともかく、この事例でブレーキフルード種類について考えました。輸入車の多くがDOT4指定のブレーキ&クラッチフルードを使用しています。
今まで高速走行を多用する輸入車ですからより沸点の高いものを設定していると漠然と思っていましたが、国産高級車でもそれなりのスピードレンジで走ることがありますからDOT3の指定は、別に理由があるのかもしれません。
国産車のほとんどが使用しているDOT3のフルードと比較してDOT4は吸湿性が高く、早期に劣化します。ベーパーロックは恐ろしい現象ですので、沸点低下を避けるために定期的なフルード交換は欠かせないのですが、高温多湿の日本国内で輸入車に長期間入れっぱなし(通常車検期間の2年間)になっているDOT4のフルードの場合、沸点低下よりも油圧系統内部への影響が無視できないかもしれないのです。
もちろん国産車と輸入車では部品の品質や耐久性は単純に比較できないですが、今回のシリンダ内部の腐食や高価なABSユニットの故障は油種に影響されているかもしれませんね。
《関連記事》
アルファ 156 2.0TS セレスピード クラッチ調整 (GF-932A2)
アルファ 156 2.0TS セレスピード バルブタイミング調整 (GF-932A2 タイミングベルト交換)
アルファ156 V6 2.5L ~真の足回りを求めて(その1)~
ocha says
国内で使用するにはDOT4というよりJIS4種という
規格で考えたほうがベターという気がします。
成分もグリコールより、ポリグリコール系の方が
いいと思っています。
ただ定期的な交換の大事じゃないかと思います。
実際、ブレーキフルードテスターで計測していますと、
2~3年で水分量はほぼ2%以上になるこことはなく、
4年から5年で2%を超えてきているのが多いです。
ご参考までに。よければ私のFBまでどうぞ。
たけし says
ochaさん、いつも貴重な情報提供感謝いたします。
実際は水分量が2%以上になることはないというのは興味深いデーターです。ラボテストデータを見ると明らかにDOT4の方が水分量が多いんですけど、実使用環境とは異なるということですね。
少し調べましたところ、DOT4は吸湿性の高さを踏まえてそれなりの性能の防錆剤を添加しているとのこと。
LLCと同じく主要性能である沸点(LLCの場合は凝固点です)ばかりに目がいきがちですが、自動車を故障から防ぐためには使用液体の防錆性能を低下させないことが実は大切なことなのかもしれないですね。
FBへのお誘いありがとうございます。現在アカウント取得しましたが、いろいろ思案しておりました保留中なんです。
池ちゃん says
どう見ても
どこから手をいれるのだろうと思案させられました
ツインスパークよりも60キロも重く大きなV6が右ハンドルのすぐ裏側、つまり室内のペダル類の直近にあるので手の入る余地がありません
たけしくんの指摘で、クーラーの配管が故意にと思えるほど邪魔をしていることがわかりました
自分でもペダルをみるためのけぞりながら室内側を検分しました
これは無理です
ところが半日で修理完了ーー長野への遠出の予定に間に合わせてくださいました
初冠雪した木曽御岳を見ながら350キロあまりの移動が心地よくできました
アルファは確かに放置すれば確実に壊れます
不具合を異音や変化で感じ取って整備すれば美しいデザインとのびやかなエンジン音が運転を希有な体験に変えてくれます
「壊れないアルファですね」といつもたけしくんは言います
実は壊れなくしているのは始動する度に耳を澄ませている臆病な知識も経験もまだまだの持ち主と、それとなく精緻に細部をチェックするたけしくんの共同作業だと感じています
いつも感謝しています
たけし says
池ちゃんさん
プロの僕が泣き言をいうのはおかしいとおもいましたが、どうしてもオーナー様にもロメオの構造を不可解さを知ってもらいたくて、詳細に説明を申し上げました。
今回のマスターシリンダの交換は、極力余計な部品を外さず行いましたので困難を極めました。
しかし、作業スケジュールがうまく調整できましたので結果的に遠出のご予定に間に合ってよかったと思います。
池ちゃんさんのロメオは本当にトラブルが少ないです。
僕が何か超人的な観察眼でトラブルを未然に防止している風に評価いただいてうれしいのですが、ただエンジンルームを眺め、たまにちょっと運転しているだけで実際は何にもしてないんですよ(笑)
馬場 新一郎 says
初めまして、馬場と言います。。
車は、アルファロメオスパイダーH15式916の3Lです。。
ミッションから加速時は、ウォ~ンとうなり声、エンブレ時には、ジャァ~と音がします。。
後、エンジンが冷えているときにガラガラと言いクラッチを踏むと止まります、概算でいいですが、ザックットいくらほどの費用を見込めばいいですか?
宜しくお願いします。。