カテゴリ: ホントの話

特別対談 「コルソマルケ×修理屋たけしくん」 ~クルマの楽しさと、共通する仕事観~ (前編)

ランチアデルタを筆頭にイタリア車・フランス車のメンテナンスで有名なコルソマルケさん。その代表U氏とお話しする機会に恵まれました。仲介くださったのは、米国の工具メーカー スナップオンの販売を営まれているO氏です。

熱湯風呂に浸かるような辛い下積みを経て独立され、難易度の高いイタリア・フランスの自動車修理で活躍されるU氏。僕も欧州車のメンテナンスに携わるようになったころ、氏の公開記事を大変参考にさせていただきました。すごい方が近くにいらっしゃるんだなと、読み進めたイタリア車修理の深部は、興味よりもむしろ戦慄に値しました。

実は数年前から何度か仕事上のことでお目にかかることがありましたが、今夜はゆっくりと胸襟を開いてお話しできる場所へご案内いたします。

オブザーバーとして、スナップオンO氏、コルソマルケさんの若手メカニックS氏に同席いただきました。(於:烏丸六角東入ル 旬・炭火焼 んまい)

 


歯科治療法で共鳴 ~ゴールドクラウンという選択肢~

たけし: 今日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。もう3年ほど前になるでしょうか。Uさんから初めてお電話を頂いたときは、本当にびっくりしました。イタフラ車メンテナンスの超プロフェッショナルが、僕に何をお尋ねなんやろって(笑) 確か、僕がたまたまストックしていたアルファロメオパーツのご相談でしたよね。

コルソU氏: そうですそうです。僕はそのとき「車の修理屋たけしくん」のブログを読み始めてしばらく経ってました。いろいろ内容に共感することがあったので、無理しなくてもいずれ会えると思っていました。確か最初にお伺いしたとき、僕は歯の治療中で、なんで歯の話になったかは忘れましたけど、「かぶせ」をどんな材料にしようか悩んでいるって話したら、たけしさんが「金(きん)がいいですよ」て言わはるから、なんでそんなん知ってんの?って(笑) いろいろ調べて調べて、考えた抜いた末にたどり着いたゴールドクラウン(金の歯冠)やったんで。

たけし: そんなことありましたねぇ(笑) Uさんは雲の上の人と思っていましたから、お話しできたのがとにかくうれしかったです。その時は僕も歯列矯正中で、たまたま関心が高かっただけやと思います。

コルソU氏: 僕と同じように考えてゴールドにたどり着いたんやったら、仕事のことも、もちろんクルマのことも色々同じ感じちゃうかなぁって思ったんです。

たけし: そんな風に感じていただいて本当に恐縮します。

 

コルソマルケU氏 独立までの歩み ~実はクルマが嫌いになりそうだった~

たけし: ところでUさんが独立される前のお話、詳しく伺ったことありませんでしたが、差支えない範囲で教えてもらえませんか?

コルソU氏: はい。独立前、輸入車整備の勉強のために勤めたところが、とにかく凄かったんです。一番最初に与えられた指示がね、『そのディアブロのエンジン降ろす準備しといて』ですよ(笑) まだなーんも分からん駆け出しの整備士に、そんな仕事、普通できます?

たけし: 凄いですね(汗)

コルソU氏: 『ジャガーのシリンダヘッド外しといて』ってのもありました。指示はそれだけ。今やったらインターネットがありますからできたかもしれませんけど、サービスマニュアルも何も無くてバルブタイミングなんかどーやって確認するのか全く分からない。けど与えられた時間は迫ってくる。とにかくバラしてシリンダヘッド外したら、めっちゃくちゃ怒られてね(苦笑) それから僕は横で親方が作業するのを立って見てるだけですわ。しばらくしたら「もう帰ってエエし」って言われて… そんなん帰れます?(笑)

たけし: 修羅場をくぐってこられたんですね(汗) 僕は、コルソマルケさんはもちろん、輸入車をメインに整備されている方々を尊敬してます。輸入車、特にイタリア・フランス車は、どんな小さな作業でも思い通りに事が運んだ試しがありません。強い精神力がないととても持たないと思います。でもUさんのお若い頃のご苦労を伺うと納得です。

コルソU氏: まあ、大抵のことがすんなり行かへんのが普通ですし。なぁ?

コルソS氏: そうですそうです。うまくいかないのをまとめた時の達成感というか、爽快な気持ちになりますからね。

たけし: そうなんですねぇ。お二方とも凄すぎます。

コルソU氏: 話を戻しますけど、その職場は長くは続きませんでした。1年くらい経ったころでしょうか、朝になると今まで経験したことのない胃痛に襲われてね。お腹はもちろん辛かったですが、体調不良より大好きなクルマを嫌いになりそうだったのが怖かったです。

たけし: で、その後独立ですか?

コルソU氏: いえ、その後ご縁あって、別の場所で輸入車メカニックとして勤めていました。社長は僕に部品の段取りから実作業の手順まで全て任せてくださいましたし、このまま勤め続けるのに何の不満もありませんでした。けど、熱湯風呂を経験したあとの、心地の良い温泉は、このままだったら人間ダメになりそうな、そんな恐怖を覚えるようになったんです。

たけし: なるほど。それで独立を決心されたんですね。

コルソU氏: はい。ご存知と思いますが、独立してすぐは出張修理を手掛け、今の店の基盤作りに奔走していました。

たけし: ありがとうございます。現在のUさんのご活躍の理由が大変よくわかりました。

 

次回『特別対談 「コルソマルケ×修理屋たけしくん」 ~クルマの楽しさと、共通する仕事観~ (中編)』に続く。

 

↓このお話のときの飲み物です。お客様に教えていただいた「米のシャンパン」と称される微発泡の純米生酒。原料は五百万石。