直線と平面で構成されたシンプルで綺麗な外観と、随分小さい車体ながら大柄の大人がゆったり座れる不思議な車室空間を備えたフィアット初代パンダです。
僕がこの魅力溢れるお車のお世話をはじめて、早11年が経過しました。
平成10年登録 E-141AKA 1.1L CVT 走行距離 121,000km
セレクタといわれる、スバルジャスティのCVTを搭載したオートマチック車のグレードです。
何かとトラブルの多いパンダのCVTが、車齢24年、10万キロ以上何事もなく動いているのは、幸運以外の何モノでもありません。
世界中に蔓延した病原体の影響で延期になっていた、同車種のイベント参加を直前に控え、主だった機能点検を終えて異常なしを確認したのも束の間、オーナー様よりクーラントがサブタンクより溢れ出ていると連絡があったのです。
明らかにオーバーヒートの痕跡です。
「ラジエータファンは回っていますか?」
と、僕は電話で尋ねます。
つい先日、良好作動を点検したばかりのラジエーターファンは、どうやら全く回る気配がないようです。短時間の運転すら難しそうなのでレッカー搬送をお願いしました。
入庫してすぐにクーリングファンを手で回しますと、明らかに空転抵抗が大きく、電源の40Aの板ヒューズが溶断していました。
週末のイベントまで2日。ファンモーターの作動不良で交換が必要です。通常通り部品入手できても間に合いそうにないのですが、予想に反することなく純正部品の供給はとっくに終了していました。
ただ、自走で関東方面までお出かけの予定でしたから、イベントへ向かう道中でトラブルにならず本当に良かったと胸を撫でおろしました。
今までよく見たことがなかったのですが、正規輸入のパンダセレクタのラジエーターファン、3箇所のステーは手作り感のある加工品でシュラウドにリベット止め。
ラジエーターの大きさと比較するとファンモーターが巨大で、高温高湿度の日本でのエアコン稼働を見据えた仕様変更だったのかもしれません。
ファンにはマニエティ・マレリの浮き文字がありますから、他車種からの流用の可能性を探ります。しかし、よく似たサイズのものは見つかってもすべて回転方向が逆。無難な本国仕様のラジエーターファンを探すことにしました。
フィアットの部品検索システムePERで調査した品番で世界をサーチすると、オランダに1つデッドストックが見つかり手配します。
故障した日本仕様のラジエーターファン(右)と比較すると大きさの差は歴然。
本国仕様のラジエーターファン装着のためには3箇所(2種類)のステーが追加で必要ですが、こちらの入手が困難を極め、イタリアの2箇所の業者から一台分をようやく揃えて、トラブルから部品交換に着手するまで1か月余りを要しました。
部品さえそろえば、組付けは一瞬です。
エアコン稼働なしの試運転では、猛暑の停車アイドリング時で、ファン作動してから停止まで5秒程度と、大変良好な冷却性能です。
比較すると小さく感じる本国仕様ラジエーターファンですが、風量はかなり強力でした。条件次第ではエアコン稼働が可能かもしれません。
今回はイベント参加が叶わず残念でしたが、次回のイベントは調子を整えてご参加いただけることを心よりお祈り申し上げます。
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