昨年と比較すると気温よりも湿度が高く感じた今年の夏。
人の体感と同じく、高温より高湿度がクルマに与える影響が大きいようで、クーラント漏れや電装系のトラブルが多発しました。
エンジン冷却系を巡るクーラントは、定期交換が必須。主成分のエチレングリコールは少々のことでは劣化しませんが、防錆剤を消費するからです。
防錆剤は、経路内壁の露出した金属表面で反応し、防錆皮膜を形成することが役目です。
形成された皮膜は、エンジンの振動などで剥離し、新しい金属表面が露出すると、新たな皮膜をつくります。これを繰り返して防錆剤は消費されていきます。
防錆効果がほとんどなくなったクーラントでも、氷点下で凍結することはありませんが、経路の金属や樹脂を著しく劣化させるのが問題です。クーラント経路の劣化は深刻で、全損相当の損傷に至っていることが珍しくありません。年数と走行距離で厳密に交換管理が必要な理由です。
一方、同じエンジン内部に流れる液体のエンジンオイル。
クーラントとは経路が違うので、お互い関係がなさそうですが、特に輸入車において、グループⅣの合成油を使い続けている個体と、それ以下のエンジンオイルを使用している個体では、エンジンルーム内の各部劣化がまるで違います。
油温高すぎ!輸入車のエンジンオイルに化学合成油を選ぶ本当の理由(MOTUL 8100 X-cess 5W-40, アルファ159)
国産車と比較して弱いとされる輸入車の樹脂。劣化は温度が高いほど急速に進む傾向にありますから、良質のエンジンオイルでフリクションを低減し、クーラント経路への熱負荷を抑え、エンジンルームの熱気を緩和させることが、何よりも長寿命に繋がると考えています。
さて、クーラントの重要性をよくご存じの141パンダのオーナー様は、微弱なクーラント漏れを発見するや連絡をくださいました。
4年前にラジエーターを交換した際、次に漏れるのはヒーターコアからでしょうとお伝えしていました。
供給終了の純正部品 フィアット パンダ 141AKA ラジエーター交換
141パンダは空調筐体がエンジンルーム内に配置される構造です。近年のほとんどの車は室内のダッシュボード奥にありますから、構造的には単純と言えます。
バッテリーの左側、空調筐体右側面にヒーターバルブが備わります。
点検鏡で、樹脂製バルブの合わせ目からクーラント漏れを確認しました。
ヒーターコア本体の劣化も心配ですので、ヒーターバルブとヒーターコアのASSYを注文しますが、残念ながら供給終了。
お客様は、空調筐体上面に見た文字 MAGNETI MARELLI と同じサプライヤの社外品を上手に見つけてくださいました。
空調筐体を取り外します。
室内のコントロールレバーと一体になっていて、室内からはエンジンルームが見えます。
これらの配置をみてお分かりの通り、エンジンルーム内の空調筐体の下は運転席・助手席の足元です。
平面フロントガラスが乗員に近く配置されていて視界が良く、車内外とも非常にコンパクトなのに不思議と窮屈に感じない優れたデザインです。
筐体を上下二分割して取り出したヒーターコアはヒーターバルブの合わせ目と、ヒーターコアとの接続部の2か所からクーラント漏れが確認できました。
最後にクーラントを注入しますが、ヒーターホース(リターン)にある樹脂製のエア抜きプラグには触れません。リターンホースを切り離し、ヒーターバルブを開放してクーラントを注入します。
フィアット・アルファロメオに同様の樹脂プラグがありますが、劣化して折損することがあり、プラグ単品の供給がないからです。
現在代替部品を模索中です。