『オイル交換の時期になりましたので、オイル交換をお願いしたいのですが、別件でご相談させて頂きたいことがあり、ご連絡差し上げました。最近、車内でガソリンのような匂いが少しするようになりました。定番のフューエルポンプの故障を疑っています。』
とお客様からご連絡がありました。
平成23年式 アルファGT 2.0JTS selespeed 走行距離 66,000km
燃料漏れが「定番」であっては困るのですが、この年代のアルファロメオの燃料ポンプは、燃料漏れのトラブルが多発しています。
ガソリンは非常に引火性(引火点 マイナス40℃)の高い液体で、とても危険だと思いますが、リコールが届け出される気配はありません。
例え経年していても、国産車では燃料漏れのトラブルは極めて稀です。しかし、外国車ではその頻度はグッと高くなり、特にこの年代のアルファロメオやフィアットのポンプにその傾向が強い印象があります。
燃料ポンプからのガソリン漏出でほぼ間違いないのですが、部品注文時に滞りがないよう、ポンプ上面に刻まれている番号の読み取りから始めることにしました。現車に装着されている部品が複数種あったり、そのトレーサビリティが不十分なことなどが予想されるからです。
ラゲッジルームの前端、リアシートの背もたれの下付近に燃料ポンプのサービスホールがあります。
3本のボルトを解いて蓋を開けると、十字の補強がされた出っ張りになみなみとガソリンが溜まっています。この出っ張りの裏側にはフューエルプレッシャーレギュレーターが備わります。燃料が高い圧力で吐出通過する部分です。
ポンプの上面の濡れた表面をエアで乾燥させますと、サプライヤーBOSCHの品番刻印と、チェコ製のものであることが確認できました。
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リコールの届け出はなくても、多発する事例に自動車メーカーが何か対策をしてるかもと期待して純正品を調達しますが、外観的に何ら変わらないポンプが届いてガッカリ。流麗な曲線美や快音を放つエンジンなど、消費者の五感を刺激するもの以外はあまり関心がないように思えてしまいます。
気を取り直して、交換作業に移りましょう。
先の写真でお分かりの通り、サービスホールと燃料ポンプの中心位置がずれていて、このホールから燃料ポンプを取り出すことはできません。
外国車ではよくある不可解な配置ですが、国産車に普通に見られる作業者への配慮はとても高度な技術なのかもしれません。
ポンプ近傍の黒いプレートはリアシートの固定を兼ねていますので、リアシートの背もたれを最初に取り去ります。
背もたれの固定ボルトは新車から触れられていないはずですが、ボルトやナットに締め忘れがあったり、斜めに掛かってネジ山が痛んでいたりで、その修正のためメイン作業の進行が滞ります。
さて、この次が一連作業の最難関で、ポンプ上面を固定する樹脂製の大きなネジ(ベゼル)の取り外しです。
作業前に準備していた自作の特殊工具を宛がいました。強い固着がありますので、ケガをしないよう大胆かつ慎重に緩めます。
自作した工具で難関を超えると実に気持ちがいいものです。
燃料ポンプは、現在主流のインタンク式と言って、燃料タンク内に完全に埋没した形で装着されています。この方式を最初に目にしたのはもう40年近く前になりますが、電気式ポンプモーターのスパークで引火しないか心配したものです。
この樹脂ベゼルは新調するのが理想です。国産部品と比較して寸法安定性に劣る樹脂製品が輸入車部品にはとても多く、再使用に耐えない可能性があるからです。
ベゼルの組付けも慣れないうちは苦労しました。樹脂製の燃料タンクの寸法にも若干の変化があるのかもしれません。特殊工具を使って少し押し込み、最初の一山の一部をパチッと平行に勘合させるとうまくいくことが多いです。
今日はイモラリミテッドのミトの継続検査準備と、冷凍庫が不調のキャリィの診断を並行する慌ただしい一日でしたが、無事に全ての作業を終えることができました。