数年前に他所でショックアブソーバを新調した際、完全に機能を失ったショックアブソーバからの変更で乗り心地や良くなったように感じていたのが、走り慣れてくると路面の凹凸で気になる衝撃感があること、ハンドル操作に以前とは違う違和感を感じるようになったとのことでご相談がありました。
平成15年式 TA-BP5 EJ20ターボ AT 走行距離 94,000km
まずは未実施のアッパーマウントの交換と、必要に応じて調整を試みることにしました。スバルのサスペンションやハンドリングは、普通車から軽自動車に至る全ての車種で共通の味付けがあります。それはジオメトリによるものでしょうが、路面の捉え方が特徴的でスバルファンを魅了する要素の一つでしょう。
フロントストラットの固定ボルトの上側は、写真の通りの偏芯ボルトで締め付け位置によりキャンバー角度の微調整ができる構造です。
受け入れ時に目視でわかるくらいのフロントキャンバー角の左右差がありました。右前輪はほぼ0度で、オフセットの小さい社外ホイールに装着されたタイヤはフェンダーから一部はみ出て保安基準不適合に。そして逆に左前輪はキャンバー角がネガティブに大きく、これでは左右前輪の接地がばらばらで左右のハンドルの応答性に随分差があったのではないかと察します。
具体的には右旋回は機敏すぎて、左旋回は鈍重。これではせっかくの低重心を生かしたハンドリングが台無しです。
偏芯ボルトの調整はただ締め付け位置をマーキングして同じ位置で固定するだけでは不十分です。計測と目視、最終的には試運転でハンドリングの不均一や違和感が無いかを感じないといけません。
フロントのアッパーマウントは劣化で表面のひび割れのほか、水平に置くと新旧で高さの違いが出るほどに変化していました。
フロントスプリングには理由が不明な配線用スパイラルチューブが巻きつけられていたり(純正のプロテクタを新調して装着しました。)
フロントスプリングのアッパーサポートの取り付け位置が45度ほどずれていてスプリングの機能が損なわれていたりと、残念な取り付け状態でした。
足回り部品の分解組みつけは、液体の介在しない部位で作業スペースが広く、比較的簡単に考えらてれるのかもしれません。試運転と微調整を繰り返し、スバルらしいハンドリングと乗り心地がよみがえりました。