初めてご来店いただくお客様です。ご相談の内容は、冬季冷間時のみホーンが鳴りっぱなしになるという不具合です。
平成11年式 GF-H42A 3G83 走行距離 64,000km
症状が出たときは、何度かホーンパッドを押したり、また、車内が温まると鳴らなくなって、通常通り使用できるとのこと。車内が完全に温まるまではホーンパッドに触れなくても突然ホーンが鳴るそうです。気温が高い夏場は全く問題なく過ごされたとのことで、寒い季節になった現在は、車内が温まるまでご自身でホーンリレーを抜いていらっしゃいました。
ホーンパッドの不調という見込みで、エアバッグインフレータが一体になった部品を交換するよう勧められた正規販社の見積もりは8万円にも及ぶそうです。原因がはっきりしないまま実施するにはあまりに高額な修理のため、ご自身で入手された中古品のホーンパッド(エアバッグインフレータ内臓)の交換ができないかとのご相談です。
機能的にデリケートは部品ですから、当方で入手していない中古部品交換後の様々なリスクをご了解いただいた上で作業に取り掛かりました。ご来店時はすでにホーンリレーは取り外されてありました。
H42Aとその同型式のホーンパッドの不調は頻発していると、お客様がWeb上の情報から把握されていましたので、現状確認しないままお持込いただいたホーンパッドを取り替えました。
ところが…鳴りっぱなしどころかホーンパッドを何度押しても全く鳴りません。抜いてあったリレーの挿入場所、挿入具合を何度か確かめましたが、問題なさそうです。中古部品が不良なのかと元のホーンパッドに戻しましたが、やはり状況は同じです。
予想に反して伺っていた症状と違う不具合が出てしまい、最初に現象を確認しなかったことを悔やみますが後悔先に立たずで、原因の追究を優先します。
もう一度お持込の中古ホーンパッドを装着しますと、今度は何事も無かったように正常動作しました。再現性の乏しい状況に困惑しますが、今一度元のホーンパッドに戻すと、全く鳴らなくなり、そしてもう一度中古ホーンパッドに付け替えると正常動作。
以上の状況から、ご来店直前に元のホーンパッドが断線したと仮説を立てて、一旦お帰りいただくことにしました。お帰りになられた後、ホーンパッドの状況を確認します。
リベットで強固に固定されているエアバッグインフレータを取り外した奥にホーンパッドは配置されていました。
柔軟な面で接触するホーンパッドの両極は、向かい合わせになっていて、片方は等間隔に不導体のシリコンゴムの突起が配列されています。この突起があるため外力を加えない限り両極は離れていますが、繰り返し使用することで、突起のない極の平らだっただろう面に塑性変形が起こったのか、部分的に盛りあがっています。
これでは、ホーンパッドを格納しているケーシングの熱による膨張収縮で、鳴りっぱなしになるような接触状態に陥るのは簡単に予想できます。
しかし、最終的に全く鳴らなくなり、断線したと仮説を立てたホーンパッドは、単体テストの結果、導通は確保されていました。
各部目視したり、屈曲させたりしますが、導通したままになる場合はあっても、断線した状況が再現できず釈然としません。
そして、お渡しした現状で全くホーンが鳴らない状況が一度あったこともすっきりとしない原因の一つでした。
すると、作業翌日、
「出先でホーン使用しようとしたら鳴らないみたいです」とお客様から連絡が入ったのです…
次回『ホーンが鳴らない 三菱 ミニカの修理(GF-H42A)』に続く。
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