前回記事『走行時に鳴り出す異音の原因は?(台湾ルノー エクスプレス)』の続きです。
しばらく走行すると、聞き慣れない異音を発する ルノー エクスプレス です。音の発生場所が左前であることは明らかで、以前から経過を見たり、各部点検しますが決定的な原因がつかめず今日に至りました。
長距離走行された後、それがきっかけになったのか、走行直後から秋の虫のような回転同期の異音も混じるようになったことと、旋回時に特に音が大きくなってきたようだとのことで、まずは可能性の高いハブベアリングの交換を実施することにしました。
近年ABSセンサープレート内臓のユニット化された「非分解ハブユニット」が主流ですが、こちらはハブベアリングだけの交換が可能な構造です。交換には油圧プレスが必須。慎重な作業が要求される難易度の高い修理です。
まず、ハブナックルからフランジ部をスライドハンマーで抜き取ります。
抜き取った瞬間、内部の焼けたグリースの臭いが鼻を突き、損傷の程度を窺わせます。
フランジのスピンドル部には、ベアリングのインナーレースが残ったままになりますので、ベアリングセパレータをセットして慎重に抜き取ります。
離脱の瞬間、「パキ」という快音が響き、この作業最大の難関をクリアします。
次はハブナックルからベアリング本体の抜き取りです。ナックルを水平に保持する台座をセットして中心を油圧プレスで押し込みます。
固着しているのか油圧ゲージが上がっても一向に離脱の気配がありません。浸透性の潤滑剤を注入してしばらく放置後、再加圧…
「ビシッ」と鈍い音がプレス台全体を震わせます。さらに加圧ハンドルを動かすと、ギッ…ギッ… とベアリングが抜け始めました。
新しいベアリングはとても円滑な回転をします。ところが、車体にハブナックルを組み付け後、手で回転させて異音を確認すると、秋の虫の声のようなキリキリ…と甲高い音が残ります。原因はどうやらドライブシャフトのアウタージョイント内部のようです。
ダストブーツの破れがないので内部まで確認していませんでしたが、締結バンドを緩めて内部を確認しますと、内部に封入されているはずの潤滑グリースがほとんど無く、一部浮き錆が出て摺動不良を起こしているようです。
これが甲高い音の原因です。適宜操舵してジョイントにいろいろな角度を与えながら回転させ、グリースを入念に注入しました。音の発生のない右側のジョイントも同様にグリース不足を確認して同様の処置をしました。
グリースは粘度(稠度)の高い液体ですからジョイント内各部に行き渡るまでにしばらく走行が必要でしょう。
一連の作業が終わって深夜のリフトサイドの寒暖計は12度。ルノーの左足に居た秋の虫の声も鳴り止み、京都は本格的な冬の到来を迎えました。
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